八話

 【そうだったね】

と、おばさん は ヘッドライトを点けた。


3人 一斉に、【「『わぁ~~~!!』」】


 昼見た 柵の中の感じでは無くて、小さく波立つ 水面が見えた。

『えっえっ?じゃぁ 星座は?』

と キーちゃんは 我慢出来ずに、車から降りて 三日月湖の方へ。

【「ちょっと待ってぇ」】

と 懐中電灯を持って、おばさん と ようちゃんが、後を追う。

 何の事か わからない、ろくさん も 一緒について来た。


 三日月湖の先に 星は見えるけど、どれが どの星なのかが わからない。

『あぁ~ もうちょっと、ちゃんと 星座の事 教えてもらっておけばよかったぁ』

「うん わかんないね…」

{何の話なんだぃ}

「鳥座の事ぉ」

{おぉ お嬢ちゃん達、鳥座を知ってるのかぃ?}

『はい 昨日、ようちゃんのおじいさん から聞いたとこなんだけど…』

「この入り江の上に 鳥座が出る時に、網毛根沼の 水を汲んで飲んだ、お友達は 一生 仲良しなんだって」

{あぁ そうか! それで わざわざ、こんな夜更けに出てきたんだね}

「『そぉ!』」


 {それじゃぁ ここからじゃ見えないよ}

『えっ?』

「見えないんですか?」

{それは 昔の話で、今は 巴川が太くなったから、川の上からしか見えないな}

「『えー!』」

{おじさん の船に乗せてあげるよ。船着き場は すぐそこだから、時間も無い 急ごう。やすさん は どうするね?}

【私は いいよ、ココで待ってるよ。この子達を 頼みますよ】


 ろくさん の軽トラに乗って、船着き場へ。おじさん の漁船に乗って

ホンの少し 進んだ所で、船を停めた。

 堤防の上から やすおばさん が、懐中電灯で こっちを照らしています。

空は 深い藍色の様な、紫色の様な空色になっていて 小さな星が 瞬いています。


 {いいかぃ 左側の 松山の裾野が、どこかわかるかい?}

「『はい』」

{あぁ しゃがんだ方がいいかな?水平線がわかり易いから。そぉ この方向だよ。右側の 岩がせり出してる所との間に、そろそろ 星が出てくるから、それが 鳥座の頭だよ}

「今 岩の上に光っているのは、うみへび座って事ですか?」

{良くわかるね!そうだよ}

『じゃぁ とも座は?』

{とも座は あの飛び出た岩が見えるかな?暗くて わからねぇかな? あぁ 木が1本だけ生えてる、あの岩だよ わかるかぃ?}

「あー」

『はい!』

{あの岩と その右の岩の間に、ちっちゃく光ってる 星、あれが とも座だよ}

「えっ?じゃぁ とも座は 一緒に見れないんじゃ?」

{それが あの岩との間の溝の、あの辺が 海への出口で、ギリギリで 見えるんだよ}

『じゃ もうすぐ、鳥座が出るって事ですか?』

{そうそ だから、一瞬の事なんだ。今から 目を離さないで見ておかないと}

「『はい!』」


 {あぁ そうだ!}

と 急に大声で。堤防に向かって

{やすさぁ~ん 聞こえるかい?}

【はぁい】

{祠の所に ポリ杓を立てかけておいたんだ。合図をしたら 沼の水を汲んでくれるかい?}

【わかったよぉ】

っと 祠へ向かって行き。

【これかい?】

{それそれぇ ポリ杓も バケツも、キレイに洗ってあるから それに入れてくれ}

【あいよぉ】


 {さぁ いよいよだよ}

「こんなに 星って、速く動くんですね」

{止まってるみたいだけど 案外 速いんだ}

『知らなかったぁ』


 {あっ どうやら出てきたみたいだな、あのちっちゃいの 見えるかい?}

「はい」

{右の 岩と岩との間の星は、どうだい?}

「『見えます!見えます!』」

{丁度 岩山を抱く様に うみへび座が渡っているだろう?}

「すごぉい!」

『ホント 丁度ぉ』


 {やすさぁ~ん 時間だ!水を汲んでくれぇ~}

【はぁ~い】

{儂も 久しぶりだよ、この空を見たのは もう何十年も見て無かった。お嬢ちゃん達の お蔭だよ。ありがとよ}

「私達こそ おじさん が居なかったら、見れなかったんだもん」

「『ありがとうございます!』」

【みんなぁ~ お水汲めたよぉ~】

{さぁ 冷えるし、戻ろうか}

「『はい』」


 祠の所へ戻って、ろくさん は、軽トラの 荷台の箱を下ろして。

中には コップや、小さいガスバーナーとヤカンが入っていて。

バケツの水を コップに入れて、祠へと。

 他の3人も 一緒についていって、棚に 水を供えると。

パンパンと 手を叩いて、手を合わせて

{去年も 水不足にならず、農作物も 豊作でした。これからの 漁を安全に、よろしくお願いします}

と 唱えました。

【村の衆が、世界の皆が 幸せでありますように…】

「『これからも ずっと、仲良していれますように…』」


 水をヤカンに入れて バーナーにかけて、沸かし始めて。

{やっぱり ちょっと生のまんまと言うのは 心配だから、と言っても 子供達は、寝れないと イケナイから、白湯でイイかい?}

「『はい!』」

コーヒーが入るのを 待って。


 かんぱぁ~~い!



 沼の水は ホンのちょっと、塩の味がした。

でも 体の中に、暖かいやさしい気持ちが 滲みわたる感じがして、ポカポカした。

1口ずつ 甘味を感じる様にも思ったし、飲んでいけば いくほど、透き通る

気分になった。



 気がつくと 網毛根沼の向こうの空が、ほんのり明るくなり始めていました。

沼の上には 湯気が立ち上り、それが 白い大蛇の様な形になって、祠に

吸い込まれていく様に見え。 皆が 祠の方を見た時、屋根の上が 

朝日に照らされ、一瞬光って 鳥が羽ばたいて行った様に見えたんです。


 4人は 思わず、自然に 手を合わせていました。








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第一部 おしまい。


 第二部は、また いつか…

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Enishi  密撼(みかん) @mecan

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