七話

 早めに 床に入った2人、寝ようとしたけれども

フェリーの中でも 昼前まで寝ていたし、バスの中でも寝てしまったのと

あの話が 気になって、眠りに就けずにいた。


 2人共 寝返りしてみたり、何とか 寝ようとはしたけど…

『ようちゃん 寝た?』

「ううん…」

『何か 短い間に、色々あって びっくりだよねぇ』

「そうねぇ」

『私 寝れそうにないんだけど?』

「うん 私も。だけど 今寝ないと、明日の朝 起きれないよ」

『そうなんだけどさぁ』

「おばさん が 起こしてくれるって言ってたから、頑張って 寝よ」

『ぅ…ン…』


 キーちゃん は ぎゅ~っと目蓋に力を入れて『寝よう 寝よう』と 小声で。

ようちゃん は なるべく鼻から、ゆっくり息を吸って 吐いてをして、寝る呼吸に

してみたりした。


 



 『あーー ダメッ!』

「ふぅ…」

『やっぱ 寝れないよぉ』

「ン…」

『だって 鳥座が出てる時の 沼の水汲みたいし、本当に 沼に水がついてるのか、心配なんだもん…』

「ホントだね 水がつくのが 今夜じゃないかもしれないもんね」

『確かめに 行こ!』

「でも おばさん 寝てると思う」

『2人で行こうよ』

「だって 夜道、怖いよぉ」

『この家に来るまで 1本道だったもん、迷わないよ』

「そうだったっけ?」

『うん 全然曲がらなかったよ』

「そういえば そんな気がする」

『ね!行こう 水がついてるのを見れたら、ちょっと安心するし』

「そうかもね」


 2人は ソッっと着替えて、玄関で もしかしたら、懐中電灯が無いかと

下駄箱の周りとかを 見ていたんだけど、見つからず 引き戸を引いたら…


 【やっぱり…】

と、後ろから おばさんの声。


 「『はっ!』」

【こんな事だろうと思ったよw】

「『ごめんなさぁ~い』」

【仕方がないねぇ~ ちゃんと温かくしたのかぃ?】

『はい 着替えたから』

【ちょっと 待っておいで、おばさん も行くから】

「『はい! ありがとうございます』」

【居間を 暖めるから、そっちで 待っててね】


 おばさん は 着替えに行ったみたいです。

使い捨てカイロを 持ってきてくれて、車で 山を下りて下さいました。


 【おばさん も はっきり 網毛根沼 一杯に、水がついているところを 見た事が無いんだよ。それに 星座の話も知らなかったから、見てみたい気持ちが ちょっとあったんだよw】

『おばさん も、水がついたのを見た事が無いんですか?』

【そうだねぇ 窪みに 少し水が溜まってる位のは 見た事あるけど、そんなに 並々と、水が張るのは 伝え聞くだけで、実際に そうなのかは、知らないんだよ。本当なら どうやって水がついてくるのかを見るのも、おばさん も興味があるねぇw】

「よかったぁ おばさんが一緒に来て下さって」

【車の方が ライトて照らせるし、良かったのかもしれないね。ちっちゃいけど 柄杓も 持ってきたよ】

『あっ! それは考えてなかった…』

「ホントだ」

【もちろん コップもね】

「おばさん ありがとうぉ」


 『ねぇねぇ そう言えば、星出てるのかな?』

「そうだわ それも忘れてた」

【大丈夫 今夜は、すっきり晴れた夜空だよ】

 松の木々の間から ちょっとずつ、ちょっとずつ見える 空を眺めて

『こっちの空は どの方向ですか?』

【こちら側は 山の西側に当るねぇ】

「じゃぁ こっちの空には、とも座も うみへび座も見えないね」

【どっちの方向に 見える星座なんだぃ?】

『南の空だよね?』

「確か そうだと思う」

【沼越しに 南の空が見えないとダメな所なんだね】

『わぁ そういうのも、全然考えてなかったぁ~ やっぱり おばさん に来てもらって良かったぁ』

「本当に」

【やっぱり 祠があった辺りからって事になると思うよ】

「『そうなんだ』」


 バス停の所へ来ると 軽トラが 1台、停まっていました。

【あら ろくさん の車じゃないかね】

その車の横に おばさん の車も停めました。

すると 車の中から、ろくさん が出てきて

{どうしたんだぃ こんな時間に?}

【この子達がね 沼に水がついているか、気になって 寝れないって言うから、連れてきたんだよ】

{なんでまた そんなのが気になるんだぃ?}

【そう言う ろくさん は、何で ココに居るんだぃ?】

{儂は 水が張った時の、水で コーヒーを淹れるが楽しみでねぇ。そのコーヒーの味は、ちょっと違うんだよ。それで 水がつくのを待っているのさ}

【ろくさん が そんなおしゃれな事を?】

{悪いかぃ!}

【いぃえぇ~w】


 『おじさん その水で、コーヒー飲んでるの?』

{あぁ 大抵その日に 水を汲んで、祠に水を上げて そのお裾分けで、ちょっとだけ 飲ませてもらってるんだよ}

「祠に?」

{もう 村の人間は少なくなってきて、祠の面倒をみる者が無いからね。それでも 誰かが 面倒みないと、日照りになっちゃぁ困るからね}

『おじさん が、ずっと?』

{あぁ そうだよ}

【そうだねぇ 昔は、みんなで この祠の所で、春と秋と お祭りしたもんだったねぇ~】

{潮の満ち引きは 気象台が教えてくれるけどよ。こっちの方が 正確な気がするんだ。その日の 水くらいは、お供えしておいた方がいいんじゃねぇかとね}

【そうだったのかぃ ちっとも、気が付かなかったよ】

{今は 巴川から、直接 三日月湖を通って、舟が出せて 潮も関係無く、漁にも行きやすくなったけど。それでも この沼の水のつき様は 季節を教えてくれる、海水の温度も それを境に、変わるんだ}

「季節も?」

{あぁ 今夜は、春の大潮の日なんだ。だから 明日からは、春って事だよ。自然は 偉大だねぇ}

『こんなに 寒いのに?』

{あぁ 潮は嘘をつかねぇ、きちんと 変わり無く 時を刻むんだ。星座と 一緒だな}

「あっ 星座!」

『沼の水は?』

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