陛下を取り戻す!
ここは帝国の皇帝が代々居住する理想郷と呼ばれる城。
理想郷の玉座には、本来座るべき皇帝の姿が今はない。
「ラ・イチさま......」
金髪をポニーテールに大きな猫目の女性が、両膝をつき祈るような姿勢で両手を合わせている。
女性は今は憎き女狐の塔に囚われてしまった皇帝ラ・イチを思い、彼の無事を祈る。
「どうかご無事で」
女性は思う。女狐には一人では勝てない。なぜなら女狐に操られたラ・イチを含む勇敢なスキンヘッド達が、女狐を守護するからだ。
おのれ、憎き女狐。私の、私のラ・イチさまを。
わなわなと女性は怒りのため肩を震わせる。
彼女には秘策があった。
鍵は蜃気楼に浮かぶ湖にあると。
女性の名前はテレースと言う。皇帝を想う気持ちは誰にも負けないと自負する恋する乙女だ。
テレースは皮鎧に革の超ミニスカートを身につけ、ベンチに腰掛ける。
手に取ったのは、太ももまでの長さがある紺のサイハイソックスと言われるソックスだ。
サイハイソックスを身につける際には、スカートが短くて白のパンツがチラチラと顔を出す。
幸い、城には誰も彼女を見るものはいなかった。
◇◇◇◇
城を出たテレースは、広大な砂砂漠まで足を運んでいた。歩くたびに砂に足を取られるこの砂漠は、人にとって相当過酷な環境であるが、汗を流し、サイハイソックスを濡らしながら彼女は探す。伝説の湖を。
探すこと二時間、ついに湖を発見した彼女は湖である男と出会う。
男は精悍な顔つきに銀髪をベリーショートにした筋肉質な体をしていた。名前はノイチ。
テレースはノイチに会うなり、チラリと紺のサイハイソックスから見えるパンツで彼を誘惑する。
「す、少しだけならサイハイソックスに触ってもいいのよ」
彼女は顔を赤らめながら、ノイチにそう言うと彼はもうテレースの虜になっていた。
秘密兵器ノイチを手に入れたテレースはいよいよ女狐の住む塔に向かう。
「ラ・イチさま、待っていてください。必ずやあなた様をお助けします」
テレースは祈るようにそう呟いた。
◇◇◇◇
ノイチの強さは圧巻だった。塔を守るハゲ供を次から次からはっ倒していく。彼にとってハゲどもは、背に携えた大剣を抜くまでもない相手だったのだ!
正直ノイチの強さがここまでと思っていなかったテレースは、彼の後ろを歩きながら目を見開いていた。
「テレース、約束は守ってくれよ」
後ろを振り向かず、ニヒルにノイチ。
「ええ、約束は守るわ。無事事が済めばね」
テレースとノイチはある約束をしていた。テレースは乙女としてこの約束は屈辱であったが、ラ・イチの為なら仕方ないと達観している。
いよいよ女狐の部屋まで辿り着いたテレースとノイチ。
中には前皇帝のガーターを装着したロックブーツと、彼女にガーターストッキングで包まれた足に踏まれるラ・イチ。
「貴様!陛下に何を!」
激発するテレースを止めたのは、意外にも皇帝ラ・イチだったのだ!
「テレース。これは私の望みなのだ」
踏まれる事が望みと言う陛下に、頭がクラクラするテレース。
それではここの変態と同じじゃないか!
と、隣で腕を組む銀髪の変態に目をやるテレース。
「ロックブーツ。ラ・イチを離してやるがいい」
銀髪のノイチがそう言うと、初めてロックブーツはノイチを見る。
その顔は恋する乙女のようだった。
「兄さま!来て下さったのですね!」
ハラハラと涙を流すロックブーツであったが、足でラ・イチを踏みつけたままなのでギャップが凄すぎた。
「ああ、テレースに頼まれてな」
ノイチはテレースに熱っぽい視線を送る。
「兄さま!まさかその女狐に!」
叫ぶロックブーツ。
「女狐はあんたでしょ!陛下を離しなさい!」
テレースも叫ぶ。
「ラ・イチは望んで私に踏まれてるのよ!」
ロックブーツの言葉に大きく頷くラ・イチである。
「そ、そんな......陛下......」
敬愛する陛下のあまりの姿に崩れ落ちるテレースに肩を叩くノイチ。
「ああ!見てたら我慢ならん!テレース!早く!早く!俺を踏んでくれ!」
ガバリとテレースの前で膝をつき、頭を差し出すノイチを見たロックブーツは、口を大きく開いたまま固まる。
「そ、そんな。兄さまが!かっこよくて素敵な兄さまがあ!」
ロックブーツも崩れ落ちる。
そんな女達に迫る二人の男。
「さあ、踏んでくれ!」
「もっと、もっと踏んでくれー!」
この後女性陣は、それぞれお互いの踏まれたい男に、命令しあう。
「ラ・イチ、テレースの言う事をきくように」
ロックブーツが言うとテレースも、
「ノイチ、ロックブーツの言う事を聞いてね」
と命令する。
こうして二人はお互いに好きな人を手に入れ、幸せに暮らしましたとさ。
ロマンシング・ラ・イチ・ツー うみ @Umi12345
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます