第8話〜暗黒騎士〜


ドラグロア帝国 王城



「それでえはぁ。暗黒騎士の皆様も揃ったことですしぃい、円卓会議を行うといたしましょうかぁね〜」



暗黒騎士セルウィンはまるで演劇を演じているかのように両手を広げながら話し始める。




「本日はぁ、皆様お忙しい中お越しいただきぃ、誠にありがたく...」


「前置きは良い。何故我らを呼んだのか、疾く要件を述べるが良いセルウィン卿」




セルウィンの前に座る、大きな西洋鎧を身に纏う男はそう言った。その表情はヘルムによって伺うことはできない。


セルウィンは「はっ!」と声をあげると仰々しく腰を折る。




「これはこれは、しつれぇい致しました。ダートラス卿。ではぁ申し上げましょう。行方の知れていなかった聖剣ウィルが見つかりぃ、どうやら新たな勇者が誕生したぁそうです」



「へ〜。やっと七人揃ったんだー??で、なにー?もしかして、もうやっちゃったとか〜??」



そう言うと、セルウィンの右隣に座る少女は退屈そうに欠伸をしている。




「今日も見目麗しいですねぇえ、エリス卿。いえいえ、魔獣軍を送ったのですが、あと少しのところでバルディア軍が到着してしまったようで......」



「チッ、使えねえ。まあ、あと二、三日もすりゃあ魔王様の魔王因子も安定すんだろ。そうすりゃ俺が新米勇者なんか狩ってやる。てめえに、出番はねえよ!!」




そう吠えたセルウィンの左隣に座る若い男はセルウィンを見下した目で睨んでいる。



「流石ですっウルトラス卿。勇ましいですねぇえ。魔王様はご自身の魔王因子が安定し次第、ウルトラス卿にはバルディアを攻めていただけるよう仰っています、当のウルトラス卿も皆様も、それでよろしいですかぁねぇ?」



ーーーーーーーーーー


セルウィンが自室に戻ると、そこには白髪白装束の美しい少女が立っていた。その色素の薄い顔には燃えるような大きな紅い瞳が目立つ。



「あらぁ〜?。こぉれはこれはぁ〜白き魔女様ではないですかぁ〜あ?どうやってここへ?」



「あなたの様子を見に来たのよ、セルウィン。それにしても滑稽ね。あんな奴らに媚びへつらって」



白き魔女と呼ばれた少女はふっと微笑むとこう答える。




「何を仰いまぁ〜すか。魔王様直属の暗黒騎士様達ですよぉ〜お?。私などとてもとても....」



「まあ、そうね。あの時何もできなかった坊やだものね。とはいえ、今はセラも貴方にしか...」


「黙れ」



セルウィンは今までとは別人の様な、鋭く、冷たい目で少女を見下ろしている。



「薄汚い魔女が、彼女の名を語るな」


「ふふふふふっ。普段からその調子でいればいいじゃない。狂った道化なんて演じちゃってさ、そっちの方が私は好きよ?」



歳からは想像もできない様な妖艶な笑みを少女は浮かべていた。



「今はあなたが契約者なんだから、楽しませてよ」



少女がそう言うとセルウィンは芝居掛かった所作で首をかしげる。



「はて、心配なさらなぁくても、楽しませて差し上げまぁ〜すよ」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

黒き勇者の異端伝説(スペルエラー) 雨城 光 @amasiro

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ