第2話 1614年、夏

 秀幸は兵に斬りかかれそうになった。絶体絶命!死を覚悟した。突然、声が聞こえたのだ。

 

「まてーい!」と大きな声がした。兵は秀幸に突撃するのをやめた。

「いったい何をしているのだ。」

「殿、いかにも怪しい者がいたものですから。」

「ほほう。そこの者。どこの国の者だ。」

「日本です。」と秀幸は慎重に答えた。

「我らと身につけているものが違うが・・・。」

「失礼ですが、ここはどこですか。今、何が起こっているのですか。」

「おもしろいことを聞くやつだな。答えてあげよう。ここは大坂だ。そして、もうすぐ徳川が攻めてくる・・・。」

 

 秀幸は意味がわからなかった。もしかして、タイムスリップしている?

 

「2016年・・・。私はその時代に生きている者です。」

「なんだと!今は1614年だぞ!」と兵は言った。

「おもしろいやつだな。名はなんと申す。」

「石田秀幸です。」

「いしだ、ひでゆきか・・・。ここに名前を書いてくれないか。」

 

 秀幸は地面に『石田秀幸』と書いた。それを見た男は驚き言った。


「おもしろい名前だな。私に仕えてみないか。共に徳川を倒そうぞ。」

「はい、よろしくお願いします・・・。」と勢いで秀幸は答えた。

「あの、すみません。殿の名前を教えていただけませんか。」

「次郎だ。」

「次郎。殿と呼ばれているのでもっとちゃんとした名前ではありませんか?」

「しばらくは次郎と呼んでくれ。さぁ、大坂城へ戻ろう。」

 

 次郎と秀幸、そして次郎の兵は大坂城へと戻ることにした。次郎はある兵に聞かれた。

 

「なにゆえ、彼を助けたのですか。徳川の兵かもわかりませぬぞ。」

「石田、そして幸の字・・・。運命を感じる。この戦、勝てるかもしれぬ。」

「勝つために大坂城に来たのでしょう。」

「そうだったな。だが、不安だった。あまり戦の経験がないからな。父のように戦ってみたいものだ。」

「大丈夫です。私にお任せを。」

「頼りにしているぞ。」


 戦国最後の大戦、大坂の陣が始まろうとしていた。

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大坂の夢 ニュー侍 @newsamurai

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