傲慢と偏見とゾンビとチート主人公

鹿角フェフ

高慢と偏見とゾンビとチート主人公

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 四行くらいで分かる『高慢と偏見とゾンビ』


『高慢と偏見』

18世紀のイギリスで傲慢と偏見を題材にいろいろなんか起きる。


『高慢と偏見とゾンビ』

上の作品にゾンビをぶっ込んだ。

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 皆さんは『高慢と偏見』という作品はご存じでしょうか??

 では『高慢と偏見とゾンビ』は?


 本日はいま世界中で大ブームを巻き起こしている『高慢と偏見とゾンビ』について少し語りたいと思います。

 もしかしたらタイトルからおや? と思われるかもしれません。

 貴方がもし『高慢と偏見』について何か思い当たる点があるのであれば、私はその疑問にイエスと答えましょう。

 そうです。ここで言われる『高慢と偏見』とは、18世紀イギリスを舞台に女性に対する誤解や偏見といった社会背景をテーマとして描かれた古典恋愛小説のことです。

 では『高慢と偏見とゾンビ』とは?

 その答えは簡単です、先ほどの作品にゾンビをぶっ込んだパロディ作品なのです。


 簡単な説明となりましたが、もしご興味があれば本を手にとってみても良いでしょう。

 有名で、どちらも多くの人から評価されている作品です。

 きっと貴方を満足させてくれるでしょうから……。



 さて話は変わって今度は日本のとある奈良県に住む鹿臭い木っ端作家へと視点を移しましょう。

 彼の名前は「鹿角フェフ」。

 日がな一日ツイッターに張り付き、フォロワーさんのツイートをファボりながら何をするでもなくコーヒーをがぶがぶ飲むなんだかよく分からない作家です。

 彼はある日思いました。


「そうだ、なんかよく分からないけど『高慢と偏見とゾンビ』をパクれば僕も人気がでるんじゃない?」


 愚かにも程がある考えです。

 名著には名著の、名パロディには名パロディの、確かな理由がそこにはあります。

 ツイッターで140文字を打ち込む事ばかりに腐心する彼がどうしてその立場になれると言うのでしょうか?


 おやおや? 画面の向こうにいらっしゃる読者の皆さんも興味が湧いてきましたか?

 彼が描く物語に。彼が記す新たな『高慢と偏見とゾンビ』の可能性に。

 ――分かりました。

 そこまで言うのであれば私も少し皆さんとおつきあいしましょう。

 これから語られるは新しい可能性。

 名作を用いて安易に生み出される二番煎じの粗製濫造品のお話です。

 では、ブラウザバックのボタンからどうぞお手を離して、しばしお時間を頂ければ……。


 ………

 ……

 …



【高慢と偏見とゾンビとチート主人公】


  「ふぅ、やれやれだぜ」


  ため息と共に、カランと薬莢が堅いコンクリートに落ちる音が響く。

  足下で未だにビクビクと痙攣する"動く屍"を見下ろし、つい先ほどまで日本の平凡な高校生だった平凡なその少年は今日何度目かになるため息をついた。


  時は2016年。

  とある研究所で開発されたウィルスが流出したことによるパンデミック。

  感染した者はその全てがゾンビとなり、人々を襲うようになったのだ。

  これにより首都機能はその殆どを停止する。

  事実上の人類滅亡の序曲は、こうして始まったのだ。


 「ふぅ、ほんと、やれやれだぜ」



 ――始まりましたね。良くあるパンデミックゾンビものの導入とさして代わりはありませんが、ここからどうやって展開していくのでしょうか?

 しかしこの主人公、何回「やれやれ」って言うのでしょうか?

 曲がりなりにも作家なのですから、もっとこう語彙力を高めて欲しいです。

 極限まで薄めたキャラクター性の主人公に流石の私も苦笑いですよ。

 さらに言えば物語の背景が曖昧過ぎてどうにもぼんやりとした印象がぬぐえません。

 ごく自然に拳銃が出てくるのも驚きです。舞台は日本なんですよね? どうなってるのでしょうか?

 開始数行ですでに設定の甘さと下調べをおろそかにしたことが如実に出ていますね。

 きっと伏線も好きなだけ張って、回収出来ないのでしょう。

 皆さんはこうなっては駄目ですよ。

 ――おっと、物語が動き出しましたね。



  ガタリと、背後の扉が揺れる。

  いろいろあって学園に逃げ込んできた彼だったが、それでもゾンビの追求から逃れる事は叶わなかった。

  否、学校だからこそゾンビが沢山いるのであろう。

  事実沢山のゾンビが目の前に現れた。

  ゾンビは今にも彼に襲いかかろうとその牙を剥き出しに歩いてくる。

  だが彼は冷静に目をつむり、そして叫んだ。


 「能力――解放!」


  その瞬間。

  全てのゾンビが燃え尽きた。


  彼には一つだけ能力があった。

  とある事情で転生した彼は神様からそのお詫びとして能力を貰ったのだ。

  先ほどの燃え尽きるゾンビがそれである。

  これが彼の能力――<ashes to ashes dast to dast(灰は灰に、塵は塵に)>。

  全てのゾンビを一瞬で消し去る能力だった。



 ――はいストオオオップ!

 ダサイ! ダサ過ぎます! 圧倒的センスの無さです!

 何ですかこの能力名!?

 ゾンビを一気に滅却できる能力ならさっきまで銃を使っていた意味は何処にあるんですか?

 確かにチートですが、これってもう事件解決してません?

 どうやって物語を展開していくんですか!

 行き当たりばったりで設定出すのは止めましょう!

 あとよく分からない英語を使うこともです! 恥ずかしいですよ単語間違いは!

 ……それよりもです。少し気づいたのですが、この物語って『高慢と偏見』、そして『高慢と偏見とゾンビ』のパロディ作品ですよね?

 『高慢と偏見』要素は何処にあるのでしょうか?

 そもそも『高慢と偏見』も『高慢と偏見とゾンビ』も舞台は18世紀のイギリスです。

 がっつり現代日本で日本人が主人公のこの物語で『高慢と偏見』を出す事は難しいどころか不可能だと思うのですが……。

 まぁいいでしょう。物語はまだ続きます。

 彼がどのように『高慢と偏見』を出すのか? 読者の皆様、どうか私と一緒に見届けてくださいませ。



  ――全てのゾンビは塵と灰と化した。

  もはや彼の安全を脅かす存在はいない。

  だが彼の表情には苦悩の顔が浮かんでいた。

  そう、死して屍となったとしても、彼が倒した存在はほんの数時間前まで確かに命を持ったその人生を歩んでいたのだ。

  一瞬で消し去ったあの数だけ、笑顔と微笑みと、人生が存在してた。

  すでに失われ、もはやどうしようもない状況になっているのだ。だがそれら幸せだった人々の思い出を自らの命を優先する為に呆気なく消し去ったことに彼は苦悩してたのだ。

 「ったく、俺って奴は……」

  自然と声がでた。

  誰に聞かせるでも無い、あえて言うのならすでに天に昇っているだろう数多くのゾンビに向けて。


 「ほんと、『高慢』な奴だぜ」


  その呟きは、まるで懺悔のようだった。



 ――あああっっとおおおおお!!

 ここで『高慢』要素が出たぁぁぁぁ!!!

 ど、読者の皆さん。聞きましたでしょうか?

 かつてこんなにも強引な『高慢』要素があったでしょうか?

 無理矢理にも程があります。決めゼリフですよ決めゼリフ!

 ほんとこの作者は何を考えているのでしょうか?

 そしてこのチート主人公は何を考えているのでしょうか?

 もちろん今の段階で18世紀イギリス要素は全く出てきていません。

 これからも出す予定は完全に無いことがうかがえます。まぁ作者である鹿角フェフは18世紀イギリスを描ききる技術も度胸も無いので当然でしょう!

 流石の小物っぷりですね!


 ……っと、失礼しました。

 私としたことが興奮のあまり大声を出してしまいました。大変失礼をば……。

 ふぅ、少し休憩です。

 皆さんもどうぞこのタイミングで飲み物などご用意されては如何でしょうか?

 よろしいですか? そうですか。

 では進めましょう。

 ……さて、冷静になったところで疑問が湧いてきましたね。

 恐らく読者の皆さんも一緒かと思われます。

 つまり、『偏見』要素はどうやって出すの? と。

 これには私も首を傾げるばかりです。

 決めゼリフというある意味で反則技は先ほど使ったばかりです。流石の鹿角フェフ氏でももう一度決めゼリフを使うような愚は犯さないでしょう。

 しかし、となると皆目見当もつきませんね。

 もしかして『偏見』要素はオミットするつもりなのでしょうか?



  ――彼は大きなため息をついてふらふらと彼は廊下を歩く。

  先ほどの行為は体に負担をかけるものではなかったが、代わりに精神が一気に疲労した。

  能力のせいでは無い。人の形をした、かつて人であったものを消し去ったことによる心の疲労だ。

  だからだろう。

  彼が歩いているその背後から死角をついてゾンビが飛び出してきたことに気がつかなかったのだ。

 「ぐああああああ!!」

 「なっ、しまっ――」

  もはや遅い。能力も間に合わず。拳銃も間に合わない。

  首にゾンビが噛みつこうとする間に、走馬燈が流れた。

  だが目をつむる彼に聞こえたのは、パンという乾いた発砲音だった。

  遅れてドサリと何かが倒れる音。

  目の前には眉間を打ち抜かれて倒れるゾンビだ。

  誰かが彼を助けたのだ。

  彼は驚いて辺りをきょろきょろと見回す。

  そこには一人の男がいた。

  拳銃を構えながらニヒルな笑いを浮かべるその男に、彼は喜びの声を上げてその男の名前を呼ぶ。


 「お前は――『ヘンケン』!!」


  そう、この白人男性こそが彼の信頼する相棒「『ヘンケン』・グリズナー」だったのだ!



 ストオオオオオップ!!!

 流石にこれは酷い! この持って行き方は酷い!

 誰ですかヘンケンって!? え? もしかしてこれが『偏見』要素ですか!?

 ウルトラCにも程があるでしょう! こんなの私は認めませんよ!!



 「へっへっへ。まったく無謀な奴だゼ」

  そのとき、別の声が彼にかけられた。彼はきょろきょろと辺りを見回す。

 「なに? この声は……」

 「オイラを置いて先にパーティだなんて酷いぜってばヨ!」

 「マイケル!!」

 「ほんとそうじゃよ。ゾンビについてはまだまだ研究段階じゃ。無謀な行為は慎んで欲しいのう」

 「ニコライ教授!」

 「ふふふ、そうよ。貴方を殺すのは私なんだから、こんなところで死なれたら困るわ」

 「キャサリン!!」



 ――まって! 待って!

 情報量が多い! 情報量が多すぎます!

 なんで一気に出した!? そして誰なんだこいつら!!

 あのね、ここ日本ですよ。しかも学校。学校!

 海外ドラマじゃないんだから、なんでそんな国際色溢れる人選なんですか!

 ってか日本人は主人公しか出てきていないじゃないですか!

 後先を考えて出してください!

 行き当たりばったりでキャラを追加しないでください!

 ほんと、もう私も読者さんも呆れて物も言えませんよ。

 これからどうやって纏めるつもりなんですか?



 「…………」

 「…………」

 「…………」

 「…………」



 ――あ、あれ? あれれ?

 ど、どうしたのでしょうか?

 もしかして怒りましたか? あの、ちょっと言い過ぎたでしょうか?

 確かに言い過ぎたかと思います。けど、別に非難しようとか筆を折らせてやろうとか、そういうつもりで言ったのではないのです。

 気を悪くしたら謝ります。だからその、機嫌を直して……。

 いや、待ってください!

 本人のツイッターを拝見してみます――やっぱり元気にツイートしていますね。

 も、もしかして。

 これっていわゆる……。



  『この作品は最後に更新されてから二ヶ月以上更新されていません』



 ここでエターだぁぁぁぁ!

 早い、あまりにも早すぎるぞ鹿角フェフ! なんで書こうと思った!?

 どの段階だ!?

 どの段階で飽きた!?

 せめて物語がもう少し動くまで、キリの良いところまで書いてくださいよ!

 私と読者さん達の時間を返してください!!


 ……返事はなしですか。

 ツイッターもブロックされましたし、これはもう駄目ですね。

 皆さん、おわかり頂けたでしょうか?

 作家鹿角フェフという人物はこういう人なのです。

 ほんと、呆れた人間ですよね。

 もっとも、はじめからこの結末は何処か予想できたものではありましたが。


 さて、良い時間ですね。

 皆さんはこの様な時間まで起きていて明日は大丈夫でしょうか?

 それとも余裕を持って先ほどの物語をご覧になられたのでしょうか?

 あいにく私には読者さんの環境を推察することしか出来ませんが、ほんの少しの間でもこの空間をご一緒できて本当に良かったです。


 さて、名残惜しいですが本日はこの辺ででお開きとしましょうか。

 お付き合い頂き誠にありがとうございました。

 またの機会があれば、その時は是非よろしくお願いします。


 そうですね、。その時は是非エターしない鹿角フェフの物語でお目にかかれればと心より祈っております……。

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