架空戦記物

田中蜜柑

第1話


 いいかね?いつからの幻想だったか。

僕らは、まだ生きて、うごめいている。


「第三魔法支援分隊、前へ。」

指揮官の号令とともに、前進を示す青のシグナルが灯火される。私は分隊長の後について駆けだし、炎熱魔法を詠唱した。分隊長は左翼への展開を指示する。左腕を前方に突き出し、魔法弾を掌で保持。右手で魔力の解放を行うためのサインを描き出す。

「目標、正面戦闘車両。放て。」分隊長の合図で炎熱弾を投射した。

旧式の物理装甲で構成された戦闘車両は、弾け飛んで融解する。乗員は影も形も残らない。

「次弾の詠唱にかかれ。」分隊長が命令する。



夜を見張っている。

――轟音、炎火、砲火が飛び交う中で、私はまだ息をしていた。

周囲を探る。戦闘開始から一時は経つだろう。

 未だに戦況がよく掴めなかった。

「本隊からどれくらい離れた?」




 敵の一群を察知してから、動きは速かった。部隊内を伝令が走り、指揮がくだされた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

架空戦記物 田中蜜柑 @tanakamikan

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ