エピローグ
さようなら
サンドロスがマザーシップに乗って去っていった後。
コギト達五人は、洞窟にてカプセルに閉じ込められていた子どもだけの国の大人達と、ハナの両親を解放して、大人達と共に下山した。
コギト達四人は、ンイタンレバでエドとがっしりと握手をして別れた。
コギト達三人は、ユキでハナとハナの両親と、PSIをなるべく使わず、普通の子どもとして、また会う事を約束して別れた。
コギト達二人は、ロブの住む国で、軽く語り合って別れた。
コギトは、アニーが住む国で、しっかりと握手して別れた。
コギトは、廃墟と化した国に向かい、全てが知らされた赤レンガの煙突の家に向かい、骸骨が灰になっているのを見て、旅の全てを灰に報告した。
十数年後。
小さな国が、一つに纏まろうとしている時代。
「ねえ、そろそろ来るんじゃない?」
黒髪のショートボブの女性が、子どもを起こさないように、
「そうだね、多分、そろそろ二人を連れて来るんじゃないかな」
銀髪の男性が、こちらも囁くように言った。
「あ、噂をすれば……」
「なんとやら、だね」
二人はそう言うと、家の外に出た。
そこにいたのは、
「あー、気持ちわりい……」
顔色を悪くしたやや老けた男性と、
「やっぱり馴れないわ、PSIテレポート……」
顔色を悪くした赤毛のセミロングの女性と、
「…………」
「コギトさん……」「コギト……」
「……二人とも、久し振り。結婚と出産、おめでとう」
コギトと呼ばれた少女は、まるで昔馴染みかのように振る舞った。
「……私が旅している間に、皆は、大人になったんだね。……私が成長する方法は、まだ見つかってないけどね」
コギトは、ロブ、ハナ、アニー、エドの順番に見渡して、
「ロブ君とハナちゃんは結婚して男の子を産んで、アニーちゃんは幼稚園の先生、エドは、シンガーソングライターとして、日夜引っ張りだこか……」
昔を懐かしむように言った。
「息子の名前、コギトにしたんだ」
ロブが言うと、
「あら、私の名前?……いいよ、使っても」
コギトは、少しだけ笑って言った。
「こうして集まるのも、三年ぶりね……」
アニーが言った。
「まあ、エドなんて、スーパースターだから、中々アポイントメントが取れないんだけどね……」
「まあな……」
エドは、自嘲気味に笑った。相変わらず、子どもが見たら泣きそうな笑顔だった。
「……コギト」
「ん?なーに?ハナちゃん?」
「ひょっとして、お別れを言いに来たんじゃないの?」
その言葉に、コギトとハナを除く全員が驚いた。
「……や、別に、お別れだなんて大層なモノじゃないよ。ただ……、次はいつここに来れるかわからない旅に出る事にしたから、さ」
「……どういう事?テレポートでいつでもここに来れるじゃない」
アニーの言葉に、コギトは、ゆっくりと首を横に振った。
「……ま、まさか……」
「ロブ君、多分、ロブ君が思ってる事が正解だと思うよ」
「……元の世界に戻る旅を始めるんですね?」
「正解。テレポートとディメンションスリップを同時に使って別の世界に行くから、ちゃんとした場所に出るのかも、この世界に戻れるのかも、全くわからないんだ」
コギトは、肩をすくめて言った。
「……そうか。ついに、か」
エドが呟いた。
「行けよ。お前の故郷にさ」
「ちょっと、エドさん!?」
アニーが目をむいた。
「俺達が、旅人のコギトを束縛したらダメだろう?笑って送り出すのも、ダチ公の務めだ」
「そ、それは……」
アニーは、口ごもった。
「ごめんね、アニーちゃん。身勝手なのは、重々承知しているんだ。でも、どうしても、一度師匠に会いたくなったんだ。私の、最後のワガママ、聞いてくれないかな?」
「……ああ、もう!わかったわよ。……いってらっしゃい」
アニーは、コギトに微笑みかけた。
「いつでも待ってるから」
「元気でね」
「たまには帰ってこいよ?」
「皆……、ごめんね、ありがとうね。……いってくる」
コギトはそう言うと、PSIテレポートを試みて、走り出した。
臨界寸前になった瞬間、ディメンションスリップを試みて、その場から消えた。
―おしまい?―
マザーズラブ 秋空 脱兎 @ameh
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