第85話 鏡

紫さん「人工知能DEEPの再起動が完了しました。」


俺「お目覚め?。」


紫さん「再起動でセーブポイントまで戻ったようです。」


俺「そう、早速だけど後部ハッチ全開にして。」


紫さん「はい、何かの作業ですか?」


俺「このローバー(作業車)を惑星Tに投下する。」


紫さん「でもローバーは地表に激突して壊れてしまいますよ。」


俺「くわしくは後で。技術的な問題だから。」


紫さん「分かりました。宇宙服の準備は良いですね?」


俺「大丈夫。」


すぐに後部ハッチが全開になって黒い宇宙空間が見えた。

第二体育館の中の空気は抜けて真空状態だ。

俺は宇宙服姿でローバーのアームを操作した。

ゆっくりと確実にローバーは船外に露出している。

最後にグッとアームを押すとローバーはハッチから出て行った。

このままローバーはライムグリーンの惑星Tを何周かして自然に落下する。

薄い大気との摩擦で燃えるか地表に激突して破壊されるか。

とにかくローバーを投下した。


俺「ハッチ閉鎖。よろしく。」


紫さん「ハッチ閉鎖。了解しました。」


後部全面ハッチが閉まった。

機体に異常が無いことを確認した紫さんが報告をしてくる。

”私”は地球への帰還を指示した。

機体が大きく加速して惑星Tが離れて行った。


宇宙服を脱いでコックピットに入った私は鏡で自分の姿を見た。

黒髪が肩まで伸びている。

化粧っ気の無い顔は白く美しい。

お気に入りの顔の角度にするとCの形のピアスが銀色に光った。



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大型輸送機ゼラニウム(体育館) おてて @hand

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