第84話 パック寿司

俺は冷凍睡眠装置の扉を中から開けて第二体育館の床に足をつけた。

すでにA子はローバーの中に閉じ込めた。

久しぶりの第二体育館だ。

無意識に足がキッチンに向いた。

まずコックピットに入ろうかと考えたがそこにはろくな食べ物が無い。

だからキッチンか。

俺はキッチンにあったパック寿司をむさぼった。

酢飯。

いなり寿司。

甘い。

パックのお茶も飲んだ。

第一と第三体育館は切り離して惑星Tに投下ずみだ。

食糧庫である第一を失ったがこの第二のキッチンにも食糧はある。

大人数名が地球と往復できるほどに余裕がある。

食糧の残量は問題ない。


俺は食後、キッチンにあるモニターをつけた。

バスケットボールの録画試合を見た。

ハーフタイムにチラリと後部のローバーの様子をうかがった。

念のためワイヤーでも封鎖しておこう。

俺はローバーに近づいてローバーのハッチを外から封鎖した。

A子がここから脱出する方法は無い。

彼女が中からハッキングをしてローバーを操る可能性を考えた。

もしA子が小型ディスプレイをポケットに入れていたら。

そのディスプレイを利用してハッキングを出来るか。

いや無理だろう。

専用ソフトやパスワードが必要になる。

地球の本社の協力を彼女が得られればワンチャンスあるが。

それはありえない。

紫さんがハッキングに手を貸せば。

人工知能は現在再起動中だ。

これもありえない。

よし大丈夫だ。

再起動後に紫さんが後部ハッチを全開にしてしまう可能性も考えた。

ほとんどありえないが。

念のため俺は宇宙服を着ておいた。

バスケの試合が終わるころ再起動終了のメッセージがスピーカーから流れ出た。


紫さん「人工知能DEEPの再起動が完了しました。」





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る