最後まで、息をのんで読み進めていく作品でした。
砂漠化した未来の東京。
「見渡す限り」を歩き続ける「調査員」、突如目の前に現れる砂で出来た「人工建造物」。
静かに、ひたすら進み続けているだけの場面でも、常に不安を感じながら次の文章を目で追っていきました。特にビルの登場シーンは脳内イメージでも轟音が聞こえてくるほどの迫力でした。
再び崩れる建造物、再び歩き続ける調査員、やっとたどり着いた目的地、現れるスカイツリー・・・。
そこで人類滅亡の瞬間を知る主人公。主人公もまた、実は既に・・・・?
心地いいほどのSFど真ん中の作品で、非常に心揺らされ面白かったです。
何より情景の色合いがとても綺麗で興味を惹かれました。
空の青と砂の白、そして黒い涙。イメージとして、とても綺麗なバランスだと感じましたね。
「すごい」の一言が感想にふさわしいような、そんな作品でした!
完結おつかれさまでした!
青い空と強い日差し、目の前に広がるのは一面の砂。
人の息吹はどこにも無い。
けれど、そこはかつての東京だという。
その証拠に、砂漠は思い出したようにかつての構造物を象る。
ビルや家、橋や公園、そして天空樹。
そんな茫洋たる砂漠を行く調査隊の話。
乾いた簡素な文章と謎めいた砂塵の構造物が、ミステリアスに物語を彩る。
けれど、この物語が伝えたいのは世界観やトリックではないはず。
砂漠を行く調査隊の前で都市は虚ろに再生される。
既に人が絶えた今、その構造物に意味はない。
ただ記録だけが自走しかつての街を描き出すのみ。
主人公たちは、そんな虚ろな記録をひたすらに調査する。
その虚ろさは街だけが持つものではない。
主人公もまた同じ虚ろさを抱える。
ただルーチンに従い言葉をやり取りするだけの彼は、しかしいつしか「自分」を見出す。
そして貧しい語彙で必死に記号を彩る。
例え、何も残せないとわかっていても。
都市と調査隊の虚ろな記録は、やがて静かに終わる。
淡々と再生と崩壊を繰り返す記録――記号――と同じように。
結局そこに意味など無いのだ。
ただ残された記号が自己組織化しているだけ。
けれど、その虚ろなビジョンは読者の心に何かを残す。
機械的な記録の想起に過ぎずとも、そこにはやはり何かの意味があるのだ。
そう感じた。