大人な一杯、いや、1話です。
ここに描かれているのは、こうなりたい、と多くの男性がそこはかとなく目指すひとつの姿なのではないでしょうか。
ギムレット。……ギムレット。
このお酒には早い作者様と、ギムレットが似合う年齢になってきた先生の姿。
先生ももしかして、内心ではまだ「ギムレットにはまだ早い」と思われていたのかも。そして何より、次の場面で作者様はどんな人を誘ってギムレットを二杯頼むのでしょう?
そんな想像が、書かれていない場面が、芳醇にふくらむお話でした。
女の私が手を伸ばしてはならない、大人の男のいい苦さ、聖域があります。ロマンを嗜む方におすすめしたい一作です。
ハードボイルドな大人の男の「いつもの」、ギムレット。
苦みと酸味とかすかな甘味のカクテルは強くて、
本当は彼にはまだ似合っていない。
それでもギムレットを注文するには理由がある。
成人式に際しての帰郷で、連れていかれた初めてのバー。
自然と交じる岡山弁が素敵だ。
背伸びしつつも幼いのが等身大な二十歳の彼と、
白髪の交じり始めた恩師の大人の男の顔の対比が利いてる。
何てことない話、かもしれない。
だけど味わい深い話で、こんな作品を読みたかった。
リアルでちょっといい人生ドラマを垣間見せる、
こういう作風がすごく好き。
今度、私も真似してギムレットを飲もう。
そして、この読書体験をチラリと思い出そう。