「異世界転生」のファンタジーと聞くと、皆様は如何に思われるだろうか。
トラックに轢かれて即☆転☆生
ダメダメだった主人公が異世界で大剣片手に無双しちゃうぞ!…こんな感じか。
此処にそんな世界は存在しない。
理は力、未来は強者の手でのみ開かれる。
本作は「本棚」であり、1話は「本」だ。
読者である我々は1冊ずつ棚から抜き出しては読み進め、息を飲む事となる。
緻密な設定と説明。作者の構想技術と執筆技術が、理論を以て我々の脳を砕きに来る。完成された話の連続が”異世界”を構築する。
ゴミ箱から墓場まで。塵を喰らう主人公、迷い込んだ少女は邂逅を果たす。
世界すら穿ち得る強大な謀略と暴力が支配する残酷な世界で、蒼刃の光に臨め———
――最初に読んで感じるものは、〝面白い〟、そして〝懐かしさ〟でした。
ライトノベルがまだライトノベルと呼ばれつつ、言葉が浸透しきっていなかった2000~2005年頃のライトノベルを思い起こさせる異世界バトルもの。
異世界の国の片隅で、ゴミ溜めのような街で生きていた主人公の前に突如現れた女の子。その子を助けるために、主人公が困難に挑み奔走する――最近ではめっきり見なくなった作風であり、ネットラノベによくある〝最初から最後までチートして苦戦することなく敵を圧倒していく〟なんてことはせず、むしろ全力出しても勝てなさそうな敵がごろごろいて、そんな相手にリスク承知で挑んでいく――これだよ、これこそが自分が読んできたラノベの姿だよ、自分が読みたかった作品だ! と強く思わせてくれました。
練られた世界観、武器の名前やそれぞれの特性、個性豊かな登場人物に、痛快で緻密な戦闘描写も見事なものです。
もうおれTUEE!麦価している作品に飽き飽きしている読者の方々、是非目を通してはいかがでしょうか。
拝啓、ゴミ捨て場にて――この一文は、ある意味読み手である私たちへ向けられているのかもしれませんよ。