数ヶ月前に一度読了しておりまして、この度二度目の読破でございます。
以前応援コメントで書いた通り、積年の憎しみを溜め込んでいた美優ちゃんの変貌が一番恐ろしい……というのは変わりないのですが、今回読んだ際に「呪神」たちの登場意義みたいなものをふと考えてしまいました。
彼らが登場しなくても背徳的なストーリーとして十分成立していると思ったんです、三者三様の心の闇はしっかりと描かれていますので。
その上で「呪神」を登場させることにより、心の闇の部分が更に鮮明になるというか彩度を上げる効果があったのではないかと読み直してみてそう感じました。利口は『依存』、隼は『利用』、ルキアは『拠り所』という位置付けをしたことによってキャラクターに深みがプラスされている印象を受けました。
例えて言うならば定期的に欲しくなる毒?ですかね、心身に害を及ぼすような事にはなりませんのでご安心ください。足を踏み入れて損はないです、寧ろなかなかに面白い世界を見ることができると思います。
三人の主人公の、それぞれの視点から物語が語られます。
別々の人生を歩む三人は、別々にある力を授けられることになります。
口にしたことが真実になる力、言霊。
言霊とそれを授けられた三人、そしてそれを授けた呪神という存在たち。それらが様々な黒い感情をかき混ぜていきます。
最初、口に出すだけで真実になる力、という言ってしまえば何でもありの能力を使うというところで、物語がぐちゃぐちゃにならないか? と心配していました。
確かに力の所有者はむちゃくちゃなことをします。しかしその行動、展開は、その人物の黒い感情と合っていて、説得力がありました。読みごたえのあるものになっていました。
登場人物の性格が黒く歪んでいて、とても魅力的です。
私が特に好きなのは、水無月 ルキアです。
快楽殺人者であり、殺した女性の死体は愛を注ぐため保管している。はっきり言ってまともじゃない人です。
そしてもうひとつ、呪神の女の子も愛していて、その想いをどんどん強くしていきます。そこもまた歪んでいて素敵でした。
黒くて歪んでいる、強い愛情が好きな方にお勧めしたいキャラです。
正直ブラックなお話が苦手な方にはお勧めできません。登場人物のすべてが黒い感情を持っています。その毒がとても強いのです。
しかしブラックなお話が好きな方には強くお勧めしたいです。
最後まで読んでみてください。最後まで――いや、最後が一番真っ黒です。