この時期の札幌は雪虫が鬱陶しい

小鳥遊咲季真【タカナシ・サイマ】

試しに札幌語ってみる

 北の都、札幌。平成二十八年十月現在人口が百九十六万人を超え、新日本三大夜景には南区の藻岩山からの夜景が選ばれている。さらには住みたい街ランキングや人気観光地ランキングその他様々なランキングにおいて上位に名前が挙がることの多い我が街札幌であるが、地元民である自分にとってはこの光景が当たり前になってしまっていてそこまで魅力的なのかと、多少疑問を抱えつつある今日この頃である。これから先は一市民である作者が主観と独断と偏見によって札幌の魅力を何とか伝えようと書かれたものなので、絶対的なものではないということを頭に留意して頂けると幸いである。



 十月というのは木枯らしが吹く前に風邪を引いてしまいそうになるような寒さが急に始まり、二十度前後の温かい日々を忘れさせてしまう。下旬にはもう雪が降り始めるころで、大量発生する雪虫に苦労する時期である。俺がふと街中を散策すれば多くの外国人を含め、大きな旅行キャリーを引きずった人々を目にすることができる。最近は本当に外国人が増えて道で道を聞かれることが多くなったことを実感している。そんな観光客がなぜか必ず訪れるであろう観光名所の一つである札幌時計台では、観光客がその外見にがっかりする間もなく記念写真をとっかえひっかえ懸命に撮っているのをよく見かける。記念撮影用の台にのぼって平和のポーズを決めている。市の交通網の中心である札幌駅には、ラーメン共和国というところがあり北海道でラーメン食べたいけどどれにしようか迷っている人にはお勧めの場所である。北海道中の有名ラーメン店が揃っていることもあり、連日観光客や地元民で混雑している人気スポットなのだ。市内をとりあえずぐるりと一周したいのであれば馬車が走っているのでそれに乗るのがいいだろう。俺は乗ったことないが、札幌中心部の観光地は大方制覇できるとはずだ。外見だけでなくきちんと施設を見学したい人は去年十二月に市内ループ化した市電を利用すると楽に回れるだろう。



 ここまで市内をぐるっと見回した様子を話してきたが、しかし、この時期はイルミネーションまで特別イベントがない時期でもある。素の札幌の魅力が試される期間ではあるのだが、それ故に難しい時期だ。北海道の食が一堂に集まる大通り公園のオータムフェストも終了し、公園には寒さに震える鳩が首を引っ込めているだけ。美しい赤れんが庁舎も今は特別何に使われるでもなく展示されているだけだし、他に札幌でやることと言えば蟹(悪いことは言わない。蟹は毛ガニにしておけ。一番うまいのは毛ガニだ)や味噌ラーメン、成吉思汗ジンギスカンとか美味なるものを食べてお土産でも買って帰ることぐらいしか素人には思いつかない。すすきの目当てならまた話は別だが、普通の札幌観光は生粋の道産子である俺でも難しいのだ。


 それでもどこかに〝オススメ〟の特別な〝どこか〟に行きたいのであれば、俺は円山動物園を勧める。北海道の動物園で言えば旭山動物園が有名だが、札幌から旭川までは少々遠い。近場の気軽に訪れることのできるいい場所だと、個人的には思う。


  地下鉄東西線『円山公園駅』にて下車。徒歩約十五分でたどり着ける、札幌市内で最も住みたい街一位の円山地区にある動物園なのだが、最近新エリアもオープンして今最も活気があると思う。俺も空き講の時によく足を運んでいる。大人の通常入園料が六百円なのだが、それに対して年間パスポートが千円である。何と二回目の入場で既にお得という破格設定。また中学生以下は無料であるため家族でも来やすいのだ。まあ、札幌市民は基本的に小学生の遠足で一度は来る所なので、新鮮味はあまりないのだが親近感はある。シロクマの赤ちゃんンが生まれたときは大勢訪れて土日だけでなく平日も混雑していた。


 ちょっと昔の話になるが約九年前、道内では帯広動物園と円山動物園にしかいなかったアジアゾウの花子が亡くなった。市民に愛されていた花子が亡くなって以来、円山動物園は今日までゾウの居ない動物園で、訪れる子供たちが「なんでゾウいないの?」とよく言っている光景を目にしてきた。これに対し、「ゾウを子供に見せたい」などの様々な多くの意見が市民から寄せられ、ゾウを再び円山に! というプロジェクトが進行。二年後にはミャンマーからゾウを導入する予定となっている。最近オープンした新エリア『アフリカゾーン』はこの像の展示に向けた物の一つで、これには俺もワクワクする童心を抑えられず、待ち遠しく思っている。ゾウが来たらぜひとも見に行ってやってくれ。

 


 さて、ここまで札幌の魅力を探ってきたわけだが少しは興味を持っていただけただろうか。俺としては当たり前のことを当たり前のように話していただけなので、あまり良いアピールにならなかった気がする。一市民としてはこの街をどう楽しんだらいいのか悩むような日々ではあるが、それでも俺は今日も横目で観光客が観光しているのを目にし、ふと見た空が雲ってたりすれば、俺もまだここで続けられそうだと、そんな気がしてくるのだから不思議な街だ。もし訪れる機会があれば、これまで述べた俺の価値観ではなく、是非自分の価値観で楽しんでくれ。そうして見方を変えれば楽しめるってことを俺に教えてくれ。俺でも知らない何かがこの街にまだ、きっとあるのは間違いないんだからさ。


  あ、この時期に来るなら大量に発生してる雪虫に注意しとけよ。雪が降る前には毎年表れるハエみたいな奴なんだが鬱陶しいことこの上ないんだよ、これが。



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この時期の札幌は雪虫が鬱陶しい 小鳥遊咲季真【タカナシ・サイマ】 @takanashi_saima

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