無料で公開されている文章に、こんなに心を動かされることになるとは思っていなかった。隔たっているのは誰と誰で、それを隔てているのは何なんだろう。
思い返せば中学生だった頃、あんなにも同性同士でくっつき合っていた時代はなかった。男子はこの話にあるように、猫とか子犬みたいにごろごろ転げまわって、女子は女子で、指先を絡め合ったり腕を組んでトイレに立ち会ったり、髪をすきあったり、あんなに他人と距離の近かった時代が他にあっただろうか。
そういう中にも、同性との距離のとり方に悩んでいた誰かはいたのかもしれない。純くんみたいな、あるいはケイトさんみたいな誰かはいたのかもしれない。そういうことに思い至りもしなかった自分の子供時代が嫌になる。
あの頃自分になにができたのか、これから何ができるのか、考えてみたけど、よくわからない。だけど考えるきっかけをこの作品は与えてくれたように思います。
これはいわゆるBL小説ではない。
性欲や「萌え」のような情動は、大なり小なり「ファンタジー」によって成立している。
純くんのマコトさんに対する感情には、「年上好き」などの、ある種の情報によって基礎づけられたファンタジーを必要としているが、異性を愛する純くんには幻想の基礎を必要としない。
それは純粋であるがゆえに、異性愛者の彼女とはとんでもないすれ違いを生じる。
しかし、この物語の恐るべき点は、そのすれ違いをがっちり受け止めたまま、幻想の台座を惜しげもなく破壊して、感情の純化を図るところだ。
いったい何が彼ら彼女らをそこまで激しい闘争のなかへ、希望を伴って臨ませるのか。
陳腐だが、それは「愛」としか呼べないものであろう。