構成力のセンス抜群

こんな風に物語を書いてみたい。そう思わせる作品でした。
いきなり自分語りになりますが、語らせてください。

『物語の冒頭でインパクトのある話をする』
『主人公にとことん困ったちゃんをぶつける』
『必要ないキャラを出さない』
『主人公が殻をやぶり、未来に目を向ける』

ニール・D・ヒックスのハリウッド脚本術や、浅田直亮のシナリオパラダイス、三宅隆太のスクリプトドクターの脚本教室などなど。小説・シナリオの教本ばかり集めて作品なんか全然作ってない自分にとって、本作品と出会えた事はとてつもない衝撃でした。

主人公・安藤純は作中でよく「思考の先読み」を行います。
読者として読み進めている途中、純の思考の先読みによって要点がまとめられストレスなく読み進められました。思考の先読みをされることで純への共感性が強くなり、純の心境が大きく変化する佳境での彼の振る舞いにとても心を動かされました。

とても丁寧に作ったんだと感じます。
まず作者として書き進め、読者として読み返して場面場面で読者はどう思うだろうかを検証していったのでしょうか。その配慮が思考の先読みとなり、純の物語への読者を引っぱる力がとても強まっています。

物語のアクセントとなる小物を使い方も上手く、インパクトのある題材の世界観を強く広げています。本当に上手い。

文句なしの星3です。

その他のおすすめレビュー