グロテスクの先にある悦楽

殺人はいかにして成されたか。その1点に集約されるストーリー展開は、陰惨かつ醜穢というほかありません。
男の欲望は加速しながらも、目の前で起こっている事態を淡々と記録しているにとどまっています。過不足なく進展する、とでも言えばいいでしょうか。
が、だからこそこの物語は美しい。残酷なシークエンスも、もはや甘美な室内楽のように心に映るのです。
背徳的な小説をお望みの方にうってつけの一篇。私の心には深く突き刺さりました。