なんという着地点……!

仮に最終段落がなくとも、真夏の夜の淡い悲恋を描いた名短編として高評価は揺るぎないものになっていたでしょう。恐らく恋愛・ラブコメジャンルの中ではそうした作品も少なくないと思います。けれども、言葉の多義性を存分に活かしつつ、最後の最後でものの見事に世界の様相を一変させる手際はさすがの一言に尽きます。
騙りのカタルシス。化かし化かされて生きるのさ。世の中はどうやら有象無象の化かし合いで成り立っているようです。ならば、素直に狐に化かされるのもまた一興かと。エキノコックスだけは気をつけたいところですが……。
麻耶雄嵩フォロワーとしては、名前を持たぬ語り手を〈香月〉と呼んであげたい気分です!

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