第19話 それから。

 地球の命運を賭け、地球そのものが巨大ロボットになって戦うという壮絶な戦いから数十年が経っていた。


 あの戦いが夢だったのか幻だったのかは今でも議論が続く一方、人類にある種の共通認識を生み出し、個人や国家間での差別や偏見いったものを緩和する効果をもたらしていた。


 その反面、罪を犯す者や紛争を起こす国もいまだに存在していた。人類は根底から変わることはできなかったのである。


 成実は、一時期時の人としてもてはやされていたが、そうしたことに踊らされることなく、自分の人生をしっかりと歩み、家族や友人の賛同と支援の元に平和維持団体を設立し、その代表になって平和維持活動に従事していた。


 活動内容は、紛争地域に赴き、和平交渉の締結を取り付けるというもので、それ以外に地球の環境保護への支援も行っていた。


 医者にはならなかったが、医師免許は取得しており、現地にて医療活動を行うこともあった。


 時に挫けそうになることもあったが、そうした時は胸に手を当てて、心臓の鼓動を聞くようにしていた。そうすると、命の恩人にして戦友でもある少年が、励ましてくれるような気がしたからだ。


 成実は今、日本行きの飛行機に乗っている。成功不可能と言われていた紛争地域での和平交渉の締結という十数年にも及ぶ難事業を成功させ、久々に帰国の途に付いているのである。


 日本で待っている家族の笑顔を思い浮かべながら、共に戦った地球の上を飛んでいるのだった。


               完

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

生命合体アースバイン いも男爵 @biguzamu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ