第2話 余談

「本日未明、○○県××市△△町の□□川の河川敷にて、女子高生の遺体が発見されました。少女は全裸の状態で川に浮遊しているのを近隣の住民に発見され、通報、事件発覚へ至りました。未だ詳細は不明ですが、少女は乱暴された形跡があり、身体の至る所に火傷の跡があったとのことです。また、司法解剖の結果、少女の膣から複数人の精子が検出されたとのことで、警察は強姦殺人事件として捜査を進めています」

「許せないですね。このような事件は。未来ある若者に対する仕打ちではない。警察には、徹底的な捜査を求めます。」

「ご冥福をお祈りします」

「それにしても、身体中の火傷のような跡、これは不可解ですね」

「家庭内で虐待を受けていたのかもしれませんね」

「根性焼きみたいなことですか?」

「あくまで推測の域を出ないので、何とも言えませんが」

「それも含め、一早く真相が究明されることを祈るばかりですね」

「さて、この事件について、この番組では被害者の少女が通っていた高校の生徒、母親、近所の方からお話を伺ってきましたので、そちらをご覧ください」


 ナレーション「先日起きた凄惨な事件。我々はその真相を暴くべく、被害者の少女の通った高校、両親、近所の方にお話を伺った……」


 女子生徒A「いつも静かで、あまり目立たない子でした」

 女子生徒B「しゃべったことはないんですけど、優しい子でした」

 男子生徒C「休み時間にもノートに向かって何かやってました。一度見せてもらったんですけど、なんか小説みたいなのがズラーっと書かれていて、すごいなあと思いました」

 女子生徒D「なんか、中学までは◇◇県に住んでたらしくて、家の事情で高校からここに越してきたらしいです」


 ナレーション「なかにはこのような言葉も……」


 男子生徒E「なんか、いじめられてるって、いや噂っすよ、で聞いたことはありますけど……」

 女子生徒F「なんかコミュ障っていうか、そーゆーので気味悪がられてた部分はありますよね。つって、これちゃんとモザイクかけて、声変えてくださいね?」

 男子生徒G「なんかマカロンってあだ名でいじられてるのは見たことがあります。なんでも○○さん(被害者の少女)の家で飼ってる犬の名前が「マカロン」だそうで、それを彼女の母親がよく猫撫で声で呼んでるのを、彼女の家に行ったことのある誰かが面白半分で呼び始めたのが最初でって、まあ詳しくは知らないんすけど」


 ナレーション「我々は、いじめの有無について、彼女の通った学校の担任、校長に聞いてみる……」


 担任教諭「いや、そんなことはなかったと思いますけどね。確かにおとなしい子で、昼休みや放課後に誰かといたってのは、そんなに見たことはありませんけど……」

 校長「そういった報告はうけておりません」


 ナレーション「いじめの有無については、はっきりしないままだった。次に彼女の母親、そして近所の方にお話を伺った……」


 記者「あの、わたくし○○局の△△ニュースというものなんですが……」

 母親「帰ってください。心の整理がまだついていないので……」

 記者「あなたたち親子は二年前にこの町に引っ越してきたと伺ったのですがそれはいったいどういった理由があったのでしょうか」

 母親「お引き取りください」

 記者「娘さんの身体中にあった火傷のような跡、何か心当たりなどないでしょうか」

 母親「すいません。お引き取りください。ガチャ(インターホンの受話器を置く音)」


 ナレーション「続いて、ご近所の方にお話を伺った……」


 近所の女性A「お母さんはそうねえ、あまり付き合いの良い感じではなかったわねえ」

 近所の女性B「あそこの家、犬を飼ってるんだけど、ここね、ペット飼うの禁止なのよ。それでね、犬、よく吠えててね、私夜なんか不眠症になっちゃって」

 近所の女性A「一緒に注意しにいったのよ、どうにかならないかって」

 近所の女性B「そしたら、ねえ、うんともすんとも言わないの」

 近所の女性A「いやんなっちゃうわ、もう」

 近所の女性A・B「「ねえー」」

 記者「娘さんは、どんな子だったか知っていますか」

 近所の女性A「あまり活発って感じの子ではなかったわねえ」

 近所の女性B「犬の散歩をよく河川敷でしているのは見かけたけど」

 近所の女性A「あそこ、言いにくいけど、ホームレスの人がたくさんいて、あまり治安よくないの知らないのかしら。女の子ひとりで歩くのは危ないわよ」

 近所の女性B「私一度話し掛けて、教えてあげたんだけど、なんか犬が「川を見るのが好きなんで、大丈夫です」って」

 近所の女性A「優しい子だったのねえ」

 ナレーション「この……


 ここでノートは途切れている。私はそれを川へ捨てる。

「マジで気持ち悪いなこいつ」

「いやあ、このまま生きてても絶対この女、犯罪者なってたやろなー」

「カナコ、お前さあ、この中二病物語に親友として参加してるけど、ご感想は?」

「マジで殺すぞ」

「こっわ」

「まあ、これで俺らに刃向かうことはもうないでしょう」

「いやあ、これを機に彼女には真人間に更生していただけたらええなあって」

「いや、無理やろ。今頃ホームレスにまわされてんねんで。俺やったら自殺もんすわ」

「もうどうでもええやんあんなん。雨降りそうやしカラオケでもいこや」

「うわ見てみて、ホームレス、自分の種残そうとして必死やん」

「甘いお菓子に群がるありんこみたい。きもっ」

「いやあ、ゴム無しがっつり中出しやもんなあ」

「まあゴミがゴミの子供孕んでも、それは社会の道理やん」

「えぐいなあお前」

「カラオケどこ行く?俺はジャンカラがええなあ」

「腹減ったわ、先マクド寄ろや」

「あー、夕焼けが綺麗やなあ」

「青春やな。曇ってるけど」

「ほな、行くわ。マカロンちゃん」

「なにそれ」

「あだ名らしいっすよ。知らんけど」

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萌え袖にナイフ 久山橙 @yunaji

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