第2話 記憶の不覚
晴れ渡る空。さんさんと惜しげもなく降り注ぐ太陽の光。もとい紫外線。
「暑い。夏なんて嫌いだぁー」
こんなに地球温暖化が進んだか知らんが、取り合えずここ日本が温帯ではなく熱帯レベルの気温になる夏。
だというのに、このご時世でうちの高校では各教室扇風機2台という心細い武器で、35度の気温の敵に立ち向かっているのだ。
最早地獄。
前2列は扇風機様が守ってくれるが、この席一番後ろは一ミリたりとも風来ない。時折、窓から入ってくる風が気持ちよく天に上ってしまう。決して、話を盛っているわけではなく、そう、リアルガチでだ。
やっとの事で真夏の
「さーいとー、頑張った俺にキンキンに冷えたアイス奢ってくれよー」
「何だ、
俺に話し掛けてきたのは十年来の付き合いがある菅一樹。俺がこんなに軽口を叩けるのは唯一無二の存在。つまるところ世に言う親友という訳だ。
俺、斎藤
言うまでもないがモテモテだ。
中学に入った頃から、バレンタインになると俺を経由して菅にチョコを渡そうとする者がわんさか。
理由としては『恥ずかしいから』『渡す勇気が出ない』と思いきや、『斎藤君と話してる一樹君が一番素敵! というわけで感想よろ‼』だった。
まぁ、自分で言うのもなんだが菅は一番俺に気を許して素が一番出てるだろうけど。あれだろ? 俺結局、菅の良さを引き出す道具に成り変わってるんだろ。
こういったことは慣れてるせいか、菅本人に愚痴ったが笑い飛ばされ、しまいには『確かに、容姿はいいと思うよ。でもさ、お前のよさが女子に分からないのが疑問だなー』と理解不可能なことを言われた。
何言ってるだ。お前は。俺は自他認める“平々凡々”だ。
勉強は少し出来るがそれ以外はある意味、平凡が完璧だ。
しかし、こんなにモテてる菅に彼女が出来たことはない。もしやアッチ系と聞いたが『なわけないだろ!』とキレられた。逆に怪しいとは流石に言わなかった。
どうして、こんな非の打ち所がない奴が親友なのかと言われれば成行としか言えない。生まれ育った場所が一緒で幼稚園が同じで、気があって、高校も同じ。それ以外何もなかった。
『腐れ縁』ってことだ。
絶賛テスト期間中で部活はお互いに休みで、久々に一緒に帰る事に。
部活と行っても週一の頻度でしかない、帰宅部同然のクソ底辺部。それは後々話すとしよう。
歩くだけでも肌の上に汗が浮かび、まだ日が高い時間帯はやってられないほど辛い。
「お前今回のテストはどうよ」
「ん? 普通だよ。普通。赤点取らなきゃいいんだよー」
責めて、会話でこの暑さを紛らわそうとしたが菅も暑さでやられ無駄な気力を使う気はないらしい。
「そうか。だなー」
町中を見渡すと、『氷』という暖簾がチラホラ見えた。
「なぁ、斎藤。かき氷食っていこうぜ!」
爛々と瞳を輝かせ、俺に訴えていた。別に、行かないという選択肢は俺の中であるわけがない。
「おう、そうだなってうお!」
突然視界が空へ。
「やっと、見つけた!」
は?
「今度は必ず守って見せるわ。安心して」
俺の胸の中では、先程菅がかき氷を欲する瞳と同じように爛々と瞳を輝かせた少女がいた。
「えっと、どちら様?」
その謎の少女はそそくさと立ち上がり、ハラリと髪を払い、
「この世界では初めてだね。えっと現世では横宮
「は、はぁ」
何だ、この人。
見慣れない銀色に輝く髪色に、どこかのリゾートビーチを思い出されるようなブルーハワイな瞳。軽くアイドルになれそうルックス。
向こうは俺の事を知ってるようだが、俺には記憶がない。知らない。
「前は浩だったよね。今世ではどんな名前なの?」
隣にいる筈の菅はポカンと口を開けて固まっている。おいおい、そうなりたいのは俺だぞ。
一体誰だよ!
僕らはまたあの空の下で 迷い猫 @117117
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