第4話「赤の宮殿」
僕たちはともにゃんに先導され、魔女の元へと、行く事になったのだが・・・。
「あのー、ともにゃん、僕たちがこれから向かう場所って、もしかしなくても、あの赤の宮殿なんじゃ・・・」
ともにゃんは驚いたように僕たちを見た。
「やっぱり、君たちにも魔女の痕跡が見えるんだね。あの宮殿は元々は赤の王妃が治める宮殿だったんだけど、最近おかしくなっていたんだ。どうやら、赤の王妃の宮殿は魔女に乗っ取られてしまったようだね」
元からあの宮殿は存在したのか・・・。
ふと、シェインが考えながら、ともにゃんに言った。
「ちょっと質問なのです。ともにゃんさんはいつから魔法少女をやっているのですか?そして、あの宮殿の赤の王妃とは?」
ともにゃんはちょっと難しそうな顔をして答えた。
「その質問に答えるのは少し難しいね。なんと言ったらいいんだろうか・・・。まあ、僕が魔法少女になったのはつい最近だよ。そして、赤の宮殿に住んでいる、赤の王妃は僕の友達のみきちゃんなんだ。だけど、最近、僕にも会ってくれなくなるばかりか、トランプの兵隊をつれて襲ってくるようになっていたんだ」
「赤の王妃?王女じゃなくて?」
不思議の国で出会った赤の王女の名前を必死に思い出す僕たちにむかって、ともにゃんは笑って言った。
「みきちゃんは元々は街の人間だよ。あの宮殿で王妃になったのは、王子様と結婚したからだよ」
「王子まで存在する世界なのね・・・」
「シンデレラみたいだね。王子様がきて、街の娘をお妃様にしちゃうなんて・・・」
と、僕たちが赤の宮殿についての話を聞いていると、突然、聴き慣れた唸り声が聞こえてきた。
「くるるる・・・」
ヴィランたちの唸り声だ。赤の宮殿の周りには沢山のヴィランとトランプ兵が待ち構えていた。
「トランプの兵まで操られているようね・・・」
「その『みきちゃん』さんがどうなったか心配だね、先を急ごう」
僕たちとともにゃんは共闘して、たくさんのヴィランやトランプ兵をなぎ倒し、赤の宮殿の門へと着いたのだが・・・。
門は固く閉ざされ、トランプの兵隊やヴィランがひしめきあっている。
とても、忍び込める様子ではない。
困ったようにレイナが言った。
「どうしましょう。これじゃ、忍び込むのは困難ね・・・」
きゅぴーんと音がしそうなバッチリウインクを決めて、ともにゃんが言った。
「それなら、任せて!ここは僕の出番だね」
「え!?」
「ともにゃん、何をする気なの?」
「さっき、言ってたでしょ?飛べるのか?って、もちろん、僕は魔法少女だからね。なんだってできるのさ。さあ、みんな、飛ぶ準備はいい?」
僕たちの足元にステッキを向けて、ともにゃんが呪文をとなえる。
「僕たちの靴よ、魔法の靴となって空を飛べるようにしておくれ!えい!」
そうともにゃんが言うと、僕たちはゆっくりと浮上し始めた。
「え、やだ。なにこれ怖いー」
と、レイナが僕の服を掴んで、困ったように言う。
「れれれ、レイナ、ちょ、服を引っ張らないで」
「うおおお、なんだこれ!?」
「タオ兄もシェインの服を掴まないでほしいです」
クスクスと僕たちの様子を見ながら笑って、ともにゃんは続けた。
「それじゃあ、このまま宮殿の中まで空を散歩しよう」
「ちょ、歩くの!?」
「それとも、下の魔女の手下たちを相手にしながら歩いた方が良かった?」
うわーんと泣き言を言いながらも、レイナは僕にしがみつきながら、空を歩き出した。
しばらく、空の散歩を続けた僕たちはやがて、宮殿の二階部分へと侵入した。
城内もトランプ兵ばかりが殺気だった面持ちで、警戒をしている。
とにかく、その、ともにゃんの友達に会って、話を聞かなければ・・・。
「ともにゃん、君の友達はどこにいるのかな?」
と、僕がともにゃんに質問したとたん、大きな笑い声が聞こえた。
「おーほっほっほ!!」
ともにゃんは驚いたような顔で言った。
「あれは・・・、みきちゃんの声だ!」
僕たちは声に導かれるまま、城内を歩き、声の主の部屋を探し出した。
こっそりと、僕たち五人は、部屋を覗き込んだ。
そこには、可憐なる美女がきわどい格好で、可愛らしいくまさんによって、お酒をつがれているという、なんとも言えない構図だった。
「さあ、くまさん、どんどんお酒をつぐのよ!」
「おーほほほほ!」
「まさか、あそこで酒をめっちゃ飲んでるのが、探してる女王じゃねーだろーな?」
王女の傍らには愛らしいくまの姿をした従者が控えており、王女の言うままに酒をついでいる。
「さあ、愚民ども!私のために酒を作りなさい!作って、作って作って、つくりまくって、世の中をお酒一色にして、みんなを酔わせてあげなさい!」
「そして、めちゃくちゃ美味しいお酒は私のものよ・・・」
「もちろん、くまさんもよ・・・」
呆れるシェインとタオを横目に僕はともにゃんに聞いた。
「あの・・・、あの人が『みきちゃん』さん?」
「みきちゃんがあんな事を言うはずがない!きっと、誰かに操られているんだ!」
我慢しきれなくなったのか、ともにゃんが王女の前へと飛び出した。
「みきちゃん!いや、みきちゃんはお酒が大好きだけど、こんなことをするはずがない!お前は誰だ!」
みきちゃんと呼ばれた女性はふふふふ・・・と含みのある笑いをすると、立ち上がった。
「あーら、バレちゃったぁ!?これでも、『みきちゃん』の真似をしていたつもりなんだけどなぁ?」
どろんと、周囲が煙によって真っ白になる。そして、その煙がはれた時、僕たちはそこによく知る人物が現れた事に驚きを隠せなかった。
「あなたは・・・、三月ウサギ!?」
「よくも、みきちゃんの姿で悪さしたな!僕は完全に怒ったよ!」
怒気を荒げて、ともにゃんが三月ウサギへと魔法をくりだす。
三月ウサギはともにゃんの魔法をするりと避けると、いつものいやらしい笑みを浮かべた。
「そんなに怒るところじゃないよー。うちら、マッドティークラブの会員を勧誘していただけじゃなーい?」
僕らがアリスの想区で学んだことは、とにかく、この三月ウサギは話がほとんど通じないことだ。こいつに構っている暇はない。一刻も早く、本物の王女を探し出さなければ。
「おっと、君たち、君たち、そんなに急いでどこへ行くんだい?何を慌てているのさ、お茶でも飲んでいきなよ」
「いやよ!ターコイズブルーのお茶なんてとんでもない」
問題はそこじゃないよ。と僕は思いながら、三月ウサギに本物の王女の行方を聞いてみることにした。
「あのさ。三月ウサギ、僕たちは赤の王女のみきさんって人を探しているんだけど、しらないかな?」
その途端、三月ウサギは目つきを変えた。
「・・・王女に何かようかな?」
そして、またも、三月ウサギ改、謎の人物は姿を変えた。白煙を撒き散らし、ボワンと姿を変え、現れたのは、またしてもよく知る顔それは幼い魔女、シェリーワームだった。
「やれやれ、わしの出番か・・・」
「魔女・・・、君は魔女なのか・・・」
機敏に察知したのか、ともにゃんがシェリーワームを警戒する。
確かに、魔女といえば、彼女は魔女だ。
僕はどう説明したらいいだろうかと悩んでいたが、先に攻撃を開始したのは、シェリーワームだった。
「王女には合わせられんよ。なにせ、魔女になってしまったからのぅ」
「魔女になっただって!?」
「そうとも、彼女はこの世界で魔法少女として生き、魔女になった。それが答えじゃ」
みきさんはかつて魔法少女で・・・、魔女になった?
しかし、シェリーワームの言葉をともにゃんは真に受けなかった。
「嘘だ!みきちゃんが魔女になんてなるはずない!」
「お前を倒して、みきちゃんのところへいく!みんな、力を貸して!」
ともにゃんが僕たちを振り返った。
タオもシェインもレイナも僕も準備はできている。
僕たちはそれぞれ、栞を使って変身、コネクトして、シェリーワームや並み居るトランプの兵隊を倒した。
すると、そこには・・・。
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