第5話「魔女の正体」

魔女を倒した僕らは驚いた。

何故なら、倒した魔女はただの女性だったのだ。

シェリーワームでもなければ、三月ウサギでもない。

その女性を見て、ともにゃんは弾かれたように彼女へと駆け寄った。

「みきちゃん!?」

みきちゃんと呼ばれた、その女性は、ともにゃんの姿を見つけると、不思議そうな顔をして言った。

「あれ?ともにゃん?」

「みきちゃん、大丈夫?ごめん、僕、まさか、みきちゃんが魔女だったなんて気がつかなくて・・・」

「ん?何言ってるの?私が魔女?」

「さっきまで、あなたは魔女の姿で私たちを攻撃していたのよ。覚えて・・・はいないわよね」

「何言ってるの?この人・・・。私は魔法少女なんだから、魔女になるわけないじゃない」

やっぱり、ともにゃんの仲間は僕たちとは別に存在していたのだ。

「でも、これで、ともにゃんの仲間が現れなかった理由がはっきりしたわね」

「恐らくは、他の魔法少女も魔女化されているんでしょう・・・、『カオステラー』によって・・・」

ともにゃんがレイナを見て言った。

「ちょっと待って、『カオステラー』って一体誰の事を言っているの?」

「そういえば、ともにゃんにはまだ、説明してなかったっけ?」

「『カオステラー』とは、この『想区』に元々あった物語を歪めて壊す存在なの。恐らくは彼女が魔女化したのも『カオステラー』のせいでしょう」

「それにしても、ともにゃんの友達が魔女になっているだなんて・・・。この『想区』の『主役』はともにゃん、あなたなのかもしれないわね」

「まあ、とにかく、その人を治療できる場所まで行こう」

そう言って、一度、街に戻る事を提案した僕だったが・・・。

「私は大丈夫よ・・・、もう魔女と戦う力はないけれど、あなたたちの足を引っ張る事はしたくないわ。一人で街に戻ることくらいできる!」

そう言って、元魔女であった女性は立ち上がった。

レイナが声を上げた。

「でも、道中にはヴィラン・・・いえ、この世界では魔女の手下だったわね。とにかく、敵がいるかもしれないわ!一人で戻るなんて自殺行為よ!」

しかし、彼女はクスっと笑って言った。

「これでも、私も魔法少女の一人よ。馬鹿にしないでちょうだい。魔女の手下の10や20楽に倒して見せるわよ・・・」

「それより、ともにゃん、気をつけて。この世界は魔女の脅威だけではないみたい。魔女を生み出す存在がいるわ。多分、私はそれに捕まって、魔女にされたんだと思う・・・」

「みきちゃん・・・」

「さあ、ともにゃん、早く行って、この世界の破滅を止めてきて!」

「後、ともにゃんと一緒に戦ってくれた人たち、あなた達も気をつけて・・・」

僕達はみきちゃんと呼ばれた女性と別れて、魔女を生み出す存在を探す事にした。

レイナは心配そうにともにゃんに聞いた。

「あの・・・、ともにゃん、先ほどの女性は本当に大丈夫なのかしら?」

ともにゃんも少し、心配そうな顔をしたけれど、すぐにいつもの自信に満ち溢れた顔で答えた。

「大丈夫だよ。だって、みきちゃんだからね!」


宮殿から無事脱出した僕らは、またしても砂漠で途方にくれることになった。

そう、なにせ・・・。

「さて、ここで手がかりは途絶えてしまったわね」

「んー、ともにゃん、他の魔法少女について手がかりはないのかな?例えば、さっきみたいに、ともにゃんの友達が実は魔法少女になるはずが魔女になってしまっていたように、『カオステラー』になっているとか・・・」

ともにゃんは複雑そうな表情で、僕たちを見た。

「それって、僕の友達が魔女になってしまったり、悪の存在的なものになっているってこと?」

僕は慌てて付け加えた。

「違うよ、ともにゃんの友達を疑っているわけではないんだ!もしかしたら、『カオステラー』によって魔女にされてしまっているんじゃないかって心配になって・・・」

そう言うと、ともにゃんは気を悪くした様子もなく答えた。

「一人・・・、心当たりがないでもないんだ。この世界で僕の友達で、僕が魔法少女であることを知っていて、いなくなってしまった人がいる」

「それは誰?」

「・・・やなちゃんって言う友達なんだけど。彼女、確かに最近、様子が変だったんだ。それに、他の友達とも喧嘩したりして・・・」

シェインがその会話に横から入ってきた。

「明らかに怪しいですね・・・」

「その子は今どこに?」

レイナが僕の言葉を奪って、行方を聞いた。

ともにゃんは困ったような表情でこう、答えた。

「行方不明なんだ・・・」

「「え!?」」

「お嬢、ますますもって、怪しくなってきたぞ」

「ともにゃんには悪いけど、その子が一番怪しいわ」

「ともにゃん、その子が行きそうなところって、どこ?」

「うーん、どこだろう。でも、もし、この世界で魔女を生み出すような事ができる場所があるとしたら、一つしかない・・・」

「それは?」

「原子炉」

「ゲンシロ?」

「平たく言うと、この世界では当たり前に使われている、すごーい力なんだけど・・・、あれ?みんなは知らないのかな?」

「・・・」

沈黙する一同にともにゃんは熱っぽく演説を続けた。

「そう、原子炉。とってもロマンあふれる場所!そして、僕の魔法少女の力はそこから供給されているんだ」

「え!?今までの変身も、魔法も、全部、そのゲンシロとかっていうところからの力なの!?」

「そうだよ。魔法少女にはそれぞれ、得意とするジャンルがあって、僕は原子炉なんだ!」

「え・・・っと・・・」

熱く語りだすともにゃんの言葉の半分も理解できない僕たちは、とにかく、そのゲンシロという場所に行くことにした。

道中、しつこいほどのヴィラン達が、僕らを付け狙う。

どうやら、ともにゃんの言うことはあたっていたようだ。

僕たちはそれぞれ、ヒーローとコネクトし、ともにゃんは変身して戦う。

こうして、僕たちはゲンシロという名前のついた宮殿へと潜入した。

ゲンシロという宮殿の中へはいると、何故か、人っ子一人いない。もちろん、ヴィランの姿さえなく、煌々と明かりは点っているものの、僕はその光景を不気味だと思った。

それは、何か得体のしれないものがいるから、ヴィランさえも近寄らないような・・・、そんな雰囲気だった。

しかし、ともにゃんはこの宮殿のことを知っているようで、迷いなく、進んでいく。その後を僕たちも追いかける。

ともにゃんは珍しく、なぜか焦った顔をしていた。

それは、この先に誰がいるのか予想できているような、そんな寂しそうな顔だった。




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