コント ラブレター

ジャンボ尾崎手配犯

第1話

舞台の真ん中に伊達と富澤が立っている。

富澤「俺、最近好きな女の子できたんだよ」

伊達「ああ、いいんじゃないの。誰?」

富澤「会社の後輩の裕子ちゃん」

伊達「へえ」

富澤「それで告白しようと思うんだよ」

伊達「あ、もうそこまで話進んでるんだ。全然知らなかったわ」

富澤「でも、直接告白するのは怖いから、メールで気持ちを伝えようと思うんだよ」

伊達「メールで? 大丈夫か、それ。直接言った方がいいんじゃないの?」

富澤「メールだったら、仮に失敗したとしても、『冗談でしたー』で済むじゃん」

伊達「いや、済まないと思うけどね。なんで、済むと思った?」

富澤「まあ、それはいいとして、下書き書いたから、添削してくれない」

伊達「ああ、いいけどさ」

ポケットから手紙を取り出す富澤

富澤「息がとまるような口づけをどうぞ私に投げてください ラブレター・フロム・カナダ」

伊達「それ、お前、『カナダからの手紙』の歌詞じゃねえかよ。だいたい、お前、カナダと一切関係ないだろ」

富澤「じゃあ、カナダの部分を変えればいいのね?」

伊達「全部削れ。いらねえよ、その部分」

富澤「裕子ちゃん。会社の廊下ですれ違うたび、君の見せる笑顔がとてもまぶしくて、ぼくは失明しそうになります」

伊達「表現がよくないよな。『失明』ってちょっと悪いイメージだろ」

富澤「いや、本当に眩しくて、俺、最近会社でサングラスかけてるからね」

伊達「それ、お前、変な人だと思われてるんじゃないの」

再び手紙を読む富澤。

富澤「裕子ちゃんとはかれこれ10年以上一緒に仕事をしているけど、喋ったことはほとんどないね」

伊達「待て、待て。喋ったことないの?」

富澤「横目でこう、じっと見てる」

伊達「それ、完全な変質者じゃないかよ」

富澤「テレパシー送ってるから」

伊達「絶対通じてないでしょ」

富澤「だって、職場恋愛ってばれたら面倒臭いじゃん。だから、テレバシーで会話してんだよ。『今日もかわいいね』とか」

伊達「なんて返事来るんだよ」

富澤「『ありがとう』って」

伊達「どう考えても妄想だぞ、それ。ラブレターなんか書いてないで、病院いったほうがいいんじゃないか」

富澤「ちょっと何言ってるかわからない」

伊達「ツッコムのも怖いわ」

再び手紙を読む富澤

富澤「この前、ラインを教えてくれてありがとう。でも、裕子ちゃんも忙しいのかな。一度も『既読』がつかないね。それでも、僕はメッセージを送れるだけで幸せです。今は、一日100件のメッセージをノルマにして送信しています」

伊達「それ間違いなく、ブロックされてるぞ」

富澤「どういうこと?」

伊達「ラインで相手にブロックされると、既読がつかなくなるんだよ。それに、一日100件って送りすぎだろ」

富澤「この前、裕子ちゃんに直接聞いたら、『あんまりラインしないんです』って言ってたから、本当に見てないんだと思う」

伊達「それ、ヤバい奴にする対応だって」

富澤「お前、俺が裕子ちゃんをどれだけ心配しているのかわかってないな。俺はな、彼女が誰かに襲われないように、いつも家の下で見張ってるんだ」

伊達「一番の不審者はお前だよ。単なるストーカーだろ、それ」

富澤「俺はストーカーじゃない!」

伊達「いや、ストーカーだって。ちょっと、他に何書いてあるのか、見せろ」

富澤から手紙を奪う伊達。

伊達「めちゃくちゃ、びっしり書いてあるな。なんだこれ、ラブレターというよりかは怪文書だぞ。『好きです』が下の方、五十回ぐらい繰り返されてるんだけど」

富澤「それぐらい気合を入れてるんだよ」

伊達「いやいや、これはまずいだろ。こんなもん渡したら、会社首だよ」

富澤「首になってもいい。この思いを伝えなければ」

走って舞台から退場する富澤。

伊達「待て、早まるな」

戻ってくる富澤。

富澤「彼女、婚約者がいるらしい」

伊達「おー、そうか。じゃあ、しかたないな」

富澤「俺はいつまでも待つよ。待つわ。いつまでも待つわ」

伊達「いいかげんにしろ!」

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コント ラブレター ジャンボ尾崎手配犯 @hayasiya7

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