戦乱の時代。ふたつの大国は、凄惨な戦争に明け暮れていた。戦果は一進一退。
自国の緊急時にもかかわらず、この物語の主人公は、倉庫番という閑職に、その身を置いていた。王立士官学校を次席で卒業した、優秀な人材だというのに。
そんな主人公のもとに、主席の座を争った、かつての友が訪ねてくる。そこから、主人公の運命が変わる……。
「すべての輜重隊を指揮して、軍の胃袋を飢えさせないよう取り計らって欲しい……」
拮抗する戦火の中、輸送網の整備のために、縦横無尽に動く主人公の姿は、凛々しく格好いい!
ただ、女性に対して優柔不断すぎるのがいただけない。だから、苦労するのだろう。それはそれで、おもしろいのだが……。
主人公と、副官として充てがわれた友の妹、そして、ほのかに想いを募らせていた町娘との関係はどうなるのか?
戦記物として読んでも、とてもおもしろい物語だが、わたしは、俄然、ふたりのどちらを選ぶのかに興味が湧いた。そう……、どちらを選ぶのか?
最初は「ファンタジー一位か……ふん、ちらっと見てやらんこともないな! ちらっとだぞ!」くらいの気持ちでしたが、一息に引きこまれ気付けば一気に読了。まさにルテリエを見続けてきたシェリーの思いです。(意味は読んで頂ければお分かり頂けるかと)
勇猛を誇る騎士でもなく、策謀を巡らせる軍師でもなく、それを支える兵站を描く。発想は奇抜、されど確かな文章力とストーリーテリングがそれを支え、奇抜に終わらぬ良作に仕上がっています。
何より奇抜なのは「兵站」というテーマを掲げた外面だけ。その内面には、巡る策略あり、一筋縄ではいかない男女のお話あり、剣が閃く戦いも、手に汗握る決戦も、先へ進まずにはいられないエンターテインメントが詰め込まれています。まさしく奇抜の皮を被った王道。してやられましたね。
このままでも凄く面白いですが、ヒロインたちと主人公の会話や戦闘シーン、もっと濃密に書いてくれたら更に魅力が増したかも。続編も見てみたいですね。
本作は戦記物。ですが主人公は前線で華々しく戦う名将・勇将・知将ではなく、後方支援係。要するに裏方さんです。その裏方さんが必死になって頑張るという筋書きの物語になっています。
更に本作の主人公の真の敵が、敵軍ではなく、「物資を消費する味方軍」である事も特徴です。有限の補給物資を必死になってやりくりし、発生するトラブルに頭を悩ませながら、主人公は知略の限りを尽くして前線に展開する味方軍に向けて、懸命に補給物資を送り届けます。
とにかく主人公達の涙ぐましい地道な努力を積み重ねる姿と、必死になって頑張る姿が非常に印象的です。ちなみに自分は読んでいて、思わず「頑張れ!!」と声に出して応援してしまいました。
裏方さんが必死に頑張って努力していく物語が好きな人なら、間違いなく本作は大ハマリする事は確実でしょう。またキャラクター達は非常に個性豊かで愛嬌があり、物語もとても緻密かつダイナミックに展開していくので、純粋に戦記物として見ても完成度が高いですので、戦記ファンの方にもお薦めの逸品です。是非どうぞ!!
戦記物ですが珍しいことに兵站(兵隊の食事)に着眼点が置かれたものです。
ストーリー的には一話に出てくる王族将軍レオの士官学校の同輩であり友達のルテリエが主人公。
どちらも平民ではなく、戦地においては兵を指揮する立場にある貴族階級である。
レオは王族で華々しい地位にいるが、ルテリエは家柄は立派だがやや貧窮しており、貴族としてそこまで裕福とは言えない生活を送っていた。
過去を掘り起こせば共に士官学校時代は優秀な成績を修めたものの、ルテリエだけは上層部の受けが悪くして閑職に追いやられ、倉庫番を務めていたが自国の窮地に対して、レオと共に立ち上がる……いわば救国の王道ストーリーといえます。
作者さんは昔から結末までしっかり描写するので二話、三話、四話と読み進めてみると登場人物のイメージがきちんと結ばれていくので読んで損はありません。
楽しみにしています。