恋愛小説のお手本のような構成

男女が出会い、障害を乗り越えて結ばれるというのが恋愛小説の基本的なプロットで、その障害が大きなものであればあるほどフィナーレが盛り上がります。
本作は初っ端から「頭から卵をかぶる」という珍しいもので読者を惹きつけてくれます。
加えて、重くなりすぎない程度に描かれる犯罪や邪魔者の存在が、一風変わった主人公とヒロインの間をかき回しつつも、結果的に近づける役目を持っていて驚かされます。
また、物理的な障壁による会えない時間、秘密の仕事、同僚のプラトニックとは呼べない恋愛など、ページを進ませるネタが随所に散りばめられています。
濃厚な恋愛小説やディティールにこだわる方は物足りないと感じるかもしれませんが、簡潔な地の文の効果もあって、ライトな雰囲気を崩すことなく最後までストレスレスで読める点は素晴らしいと思います。
とても面白かったです。

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