十代の少女と恋するのは中年のおっさんが相応しい。
こんなこと公言すれば変態、ロリコン、光源氏と袋叩きに遭うだろう。
しかし本作はその背景を事細かに解説する。
少子化、晩婚化、若年層の貧困……。現代の日本が抱えるこれらの問題を一挙に解決する手段が「少女 × おっさん」なのである。
結婚適齢期だが生活力の無い十代の少女。対するおっさんは社会的にも資金的にも余裕がある。二人が結ばれれば結婚後の生活も安泰だろう。
お互いが短所を補い合えるのだ。
……と、論理的には至極まっとうなのだが、若い男子にとってはとんでもない。
意中の幼なじみがいきなり結婚、などという血も涙も無い情景がそこら中で展開されるのだから。
本作は緻密な未来予想のみならず、こういった男子の苦い初恋をまざまざと描いている。
主人公はまさにこの境遇の学生。
衝撃の事実を知り、自らの初恋をもて余してしまう。
そんな彼が周りの人間に後押しされつつとった行動はひどく切ない。
けれど、前へと向かう力強さも秘めていた。
最近失恋した人にはなかなか「来る」ものがあるのではないかと思う。
近未来SFとしても青春恋愛小説としても魅力に溢れた作品だった。
しかしこれ、業が深いですねぇ……。
主人公のおかげで真っ直ぐな物語になっていますが、NTRと光源氏成分も濃厚です。
こちらの妖しさに惹かれる方もいるのではないかと。
様々な楽しみ方ができる作品です。
是非ご一読を。
まず、面白い社会システムを描いているな、と感心しました。
実際に、不況下では年の差婚が増えるという話もありますし、好きなだけでは結婚生活も破綻していくでしょう。
進路希望調査に『お嫁さん』の一文でもう、クスリと微笑ましい気持ちにされた反面、少年の切ない失恋模様にもチクリと心が痛みます。
二人の約束が、こういうラストで形を変え実を結ぶという、どこかセンチメンタルな余韻を残しつつ……
読めば読むほど、どこか空恐ろしさを背中に感じます。
思春期を持て余した若い男性からしたら、もう鬱屈とした世界、地獄ではないでしょうか。
いとこの女性教諭のその後が知りたいですね。
彼女の言葉だけが、この社会で唯一の希望に思えました。
過去にもあったし、現在でも存在する結婚の形。
「男は社会的地位や財産、女は若さと健康が結婚の好条件」
それが当たり前になった日本。
ずっと想いを寄せていた幼馴染が(おっさんと)結婚する?
社会のシステムにも、大人の男にも、自分を追い越していく幼馴染にも、打ち勝てない男子高校生の胸の内がなんとも現実的。
「それでも伝えたい」
やっぱり青春は良いです。
しかし、この作中世界で最も悲惨なのは、社会的地位や財産を得られなかったおっさんたち。
青春もなく、伴侶もなく、現実世界以上のデストピアなのでは。
主人公の従姉のその後も含めて、もう少し知りたくなる世界でした。