派手さがない分、現実味が増す

 もうすぐ四十路に到達しようかというビジネスマンの視点で語られる、人間関係と自分自身と、臆病な恋心。
 唐突においしいものが食べたいと思い立った主人公、遠野が偶然会ったのは、同じ会社の新人女子社員、白井だった。

 この作品、派手なイベントというものがほぼない。その分、彼らの抱える悩みやトラウマ、焦りや嫉妬などの感情にリアリティがあって身につまされる。
 それなりに社会経験を積んだ人は特に、主人公の遠野や彼の同僚に自分と近いものを感じるだろう。
 誰もが何かを抱えて一生懸命生きていると感じさせてくれる良作だ。

その他のおすすめレビュー

御剣ひかるさんの他のおすすめレビュー908