主人公は、担任から欠席したある少女に手紙を届けるよう頼まれる。
その少女は、高校入学以来、誰ともしゃべらない異質な闇のある少女だった。
その少女の家に手紙を届けにいったときから、主人公の歯車は回り始める。
あのとき、止めてしまった、忘れてしまった歯車が。
そしてその歯車は、少女自身にも影響を与えていく。
はじめは、ホラーだと思いました。
でも、読み進めていくうちに、あれ、これは違うぞ。もしかして青春もの?成長もの?
途中、真相が明らかになっていく過程は、ハラハラドキドキ。
最後の最後まで、ハラハラ。
そしてラストは……また違う展開が待っていました。
高校生のノブが一人の女子生徒、アキコと出会い、色々なものを乗り越えていく~みたいなお話。
こんな風にざっくり書くと青春ボーイミーツガールかなぁと思う方もいらっしゃると思います。が……重い!
Web小説ではなかなか見ないような重めの青春ものなのです。
爽やかな青春小説にはあまりないような、剥き出しの悪意や人間の暗黒的な部分がたっぷりと盛り込まれてます。
すごく現実的です。
序盤はホラーな展開で読者を引きずり込み、中盤で主人公やアキコの過去が次々と明かされていきます。
気がつくと物語も終盤。二人を応援してしまっています。
あと、終わり方がすごく良かったです。
良い意味で中途半端なハッピーエンド。
二人のことだからこれからも色々と悩んで精一杯生きていくんだろうなぁと思います。
個人的に、あずさちゃんには幸せになってほしいです。
そんなわけで、濃厚でリアルな青春小説をお求めの方、ここにピッタリな作品がございますよ!
主人公の『山井明信(ノブ)』の一人称で語られる暗黒青春系小説。
高校生の頃に芽生える自我や自意識、周りと自分との距離間、男女の恋愛、友情、過去のトラウマ、そういった青春に必要不可欠な要素がすべて盛り込まれた、かなり重めの物語。
クラスには『笹井亜希子』という少し特殊な女の子がいて、クラスで浮いた彼女は、どこか腫れもののように扱われている。作中の言葉で言えば、『柳川系』という、何を考えているのか分からない不気味な生徒の隠語で呼ばれている。
ノブが彼女と関わることで物語は少しずつ動き出していくのだ、それは必ずしもうまい具合に進んでいくというわけではなく、胸を抉られるような痛々しい描写が続く。お互いの過去と向き合い、トラウマを乗り越える(正確には、乗り越えているとは言えないのかもしれない)ことで前を向くという、ある種の再生や、やり直しの物語と僕は読んだ。
何気ない日常の描写が多く、友人たちとの会話や行動などが克明に描かれていて、物語の進みは遅いのだが――この何気ない、いつも通りの日常が、少しずつ何かに浸食されていくという怖さがしっかりと描かれていて良かったと思う。
主人公と関わる友人やクラスメイト達も、完全にいい奴でも悪い奴でもなく、人間特有のズルさや弱さが描かれていてとてもリアリティを感じた。主人公とつるんでいる仲良し三人組のやりとが胸に刺さるという人は多いんじゃないかな?
ネット小説ではあまり読者がいないタイプの物語だと思うのだが、最後まで読んで得られる「一冊の本を読んだなあ」と思える満足感は確かにあるので、ぜひとも最後まで読んで――過去に傷をもった少年少女が、どのようにして新しい一歩を踏み出すのか見届けてほしいと思う!