どんなに濃い闇、深い夜でも――花は美しく咲いている!

主人公の『山井明信(ノブ)』の一人称で語られる暗黒青春系小説。

高校生の頃に芽生える自我や自意識、周りと自分との距離間、男女の恋愛、友情、過去のトラウマ、そういった青春に必要不可欠な要素がすべて盛り込まれた、かなり重めの物語。

クラスには『笹井亜希子』という少し特殊な女の子がいて、クラスで浮いた彼女は、どこか腫れもののように扱われている。作中の言葉で言えば、『柳川系』という、何を考えているのか分からない不気味な生徒の隠語で呼ばれている。

ノブが彼女と関わることで物語は少しずつ動き出していくのだ、それは必ずしもうまい具合に進んでいくというわけではなく、胸を抉られるような痛々しい描写が続く。お互いの過去と向き合い、トラウマを乗り越える(正確には、乗り越えているとは言えないのかもしれない)ことで前を向くという、ある種の再生や、やり直しの物語と僕は読んだ。

何気ない日常の描写が多く、友人たちとの会話や行動などが克明に描かれていて、物語の進みは遅いのだが――この何気ない、いつも通りの日常が、少しずつ何かに浸食されていくという怖さがしっかりと描かれていて良かったと思う。
主人公と関わる友人やクラスメイト達も、完全にいい奴でも悪い奴でもなく、人間特有のズルさや弱さが描かれていてとてもリアリティを感じた。主人公とつるんでいる仲良し三人組のやりとが胸に刺さるという人は多いんじゃないかな?

ネット小説ではあまり読者がいないタイプの物語だと思うのだが、最後まで読んで得られる「一冊の本を読んだなあ」と思える満足感は確かにあるので、ぜひとも最後まで読んで――過去に傷をもった少年少女が、どのようにして新しい一歩を踏み出すのか見届けてほしいと思う!

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