現在15話飛行途中。この先も長い期間読むつもりだから
ここで一度立ち止まって給油しがてら、書き残しておく。
千夜一夜物語のごとく、毎晩抱えたい作品。
砂色の背表紙が何巻も、本棚に並んでいるのが見えてくる。
中表紙には、きっと古い地図が描かれているはずだ。
故郷ライル村、めざすアストリア、まだ見ぬ世界。
手に取ると、郵便飛行機乗りと一緒に逃避行したり
氷を割るバーテンダーのほほえみが寄り添ってくる。
暗躍するノワールたちが これから続々と出てきそうな気配。
物語の空気の重さが 心地いいんだ。
甘すぎない浪漫が散りばめられ、良質の本物の味がする。
愛しても愛しきれない、恐れても恐れたりない、それでも一度行けるのだと知った空への思い。夜間飛行も風立ちぬも、空を描いた小説はどれも好きですが、この小説もまた私の心に深く響いた作品です。まだ序盤ですが、これは傑作と思い、思わず感想を入れてしまいました。
私の祖父は前の戦争で陸軍の飛行機乗りでして、幼い頃に聞いた空の思い出は今でも時々思い出します。飛行機乗りにはどこかセンチメンタリズムに満ちたところがあって、空を語る人からはその深い信念や孤独が伝わってくるものですが、本作はそうした飛行機乗りの特徴を見事に表現していると思います。
また深い知識に裏打ちされた描写も多く、砲撃で砕ける雲や砂漠での着陸のノウハウ、護身の武器やサバイバルの食事、その他の工学に関するシーンも面白く読めました。
さらには、この作品は単に美しい空の描写とそこを駆ける男の思いだけではなく、淡い恋や裏がある相手との駆け引き、そして迫力に満ち、かつ心理戦を組み込んだ空中戦など、活劇に求められる要素も満載です。
この作品は是非にも映像化してほしいです。雲海を駆けるレッドベル、果てしなく広がる砂漠の寂寥、喜怒哀楽に満ちた主人公ラシェットの生き生きとした表情を見てみたいです。100万字オーバーの大作ですが、時間をかけてでも最後まで読みたいですね。
これは傑作です。
なろうで一通り読み、感想を書かせていただきましたがそれでは他の方々にこの素晴らしい作品を読んでいただけないかと思い、レビューさせていただきます。
はっきり言って、この作品、めちゃくちゃ面白いです。
もし貴方が「天空の城ラピュタ」や「紅の豚」が好きならまず読むべきです。何故ならこの作品にはジブリ作品に通ずる夢とロマンが詰まっている。
行方不明の友人からの手紙、頑固なエンジンの飛行機、信頼でき豪快な仲間達、影で暗躍する謎の男、国家の陰謀、不思議な目をした民族最後の生き残りの少女、古代文明の遺産、そして失われた記憶。
これらのワードにワクワクできる人間なら直ぐにこの作品を読んでみるといい。物語の面白さは徐々に加速し、序盤からは想像もつかないような「真実」に辿り着く様を見ることが出来るでしょう。
ただ飛行機を乗り回すのが上手なだけの若者が運命に導かれながら、それでも運命に抗おうとして冒険する。チーレムやご都合主義展開だけの量産小説に疲れた貴方に贈りたい一冊。