緑の花と白い花

PURIN

緑の花と白い花

森の奥の奥のそのまた奥に、背の高い草に隠れるようにして小さな花達が咲いていました。

その花達は綺麗な白い色をしていました。


でも時々、緑色の花が咲くことがありました。

そんな時、他の花達は言いました。

「みんな白なのに、草と同じ緑色なんておかしいよ。君も白にならなきゃダメだよ」

そう言われた緑の花は、白い花達の花びらから作られたペンキで自分を白く塗るのでした。


白い花達は、みんなが同じ白い色になることがみんなの幸せなのだと信じて疑いませんでした。

そう教えられ続けた緑の花達も、それが正しいのだと信じて疑いませんでした。

みんな、それで幸せでした。


ある晴れた日、上から何か大きなものがぬっとおりてきました。

それは、人間の手でした。

「綺麗な花だなあ。こんなところに咲いてるなんて知らなかった。全部摘んで帰ろう」

そう言って1本の花に手を伸ばしてきました。


ぱちん

1本の花が折られました。

「いたいいたいいたい!」

折られた花は泣き叫びました。


花達はパニックになりました。

必死に草の影に隠れようとしました。

でも、みんな緑の草と違って白いので、どんなに隠れようとしても目立ってしまい、結局は見つかってしまいました。


とうとう、もとから白い花達も、もともとは緑の花達も、みんな残らず摘み取られてしまいました。


あれからだいぶ経ちますが、みんなが摘み取られた後の地面には、今でも何も生えていないそうです。


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緑の花と白い花 PURIN @PURIN1125

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