ジジイが空を飛び、読者も「空想の空」を飛べるお話!

 空飛ぶジジイに出会った少女が、いじめられる毎日から脱出する物語。一言で言ってしまえばそうなるけれど、「空飛ぶジジイ」という荒唐無稽な設定をどう料理するかが、このお話の読みどころのひとつです。
 読む方は「なんでこうなるの?」「そうきたか!」って読みながら楽しめますが、書き手の立場になるとけっこう難しいなあと、私などは感心してしまいます。あり得ない設定を書き手自身が途中で疑ったり、恥ずかしがったりしたら最後まで書き通せない。そこは作者さんの筆力と作品への情熱のなせる技だと、羨ましく思いました。
 不思議な世界を舞台に単なる面白い話で終わらず読後感が爽やかなのは、少女の気持ちの変化が丁寧に追われているからです。「自由に」空飛ぶジジイに力をもらって、少女は「自由」な自分の日常を取り戻すのです。
 しかし、大勢のジジイが空を飛んでいるシーンは、想像するにシュール。蛙田さんのほかの作品を読んでも感じましたが、作風がなんだか絵画的なのです。どうぞ、皆さんも頭のカンバスに自分なりの絵を描くつもりで読んでみてください!