第5話 「そのお金で支度を整えるがよい!」

「さて、魔王を倒せるだけの資格という点では話がまとまりましたが……」


王妃が手を挙げる。


「わたくし思うのですが、人間的に素晴らしい方でなくては勇者とは言えないのではないでしょうか?」

「そうじゃなあ。報奨金目当ての者もたくさん居たからのう」

「それだと傭兵でございますな」

「ふむ。勇者の人間性を問うのですな」


大臣が次の議題を書類に書き込む。


「儂の国から輩出する以上、国民として恥ずかしくない行動をとるのは当然じゃ。国の名誉にかかわる」

「それに、世界を救うのなら道中で困った人を助けるくらいは当然ですわよね」

「まあ、お優しいお方ですね。お父様、それならやっぱり容姿も整っていらっしゃる方が良いですわ」

「そうじゃのう。魔王討伐後は称えるための肖像画や銅像を作ることになるし……」

「見た目が悪い勇者の肖像画や銅像を後世に残すのは恥でございますな」

「ふむふむ」


大臣は『品行方正』『容姿端麗』と記して行く。

さらに兵士長が手を挙げる。


「ですが王様。見た目は良いとして、性格はどのようにお確かめになるのですか?」

「むむ……謁見の時に幾らでも装うことは可能じゃな」


王妃が発言する。


「でしたら、候補者に与える餞別せんべつを簡素な物にしたらいかがかしら」

「街で売っている安い武具とちょっとの資金程度でしたら、兵士たちに言えばすぐに調達できますぞ王妃様」


その言葉を受けて王が手を叩く。


「なるほど。その時の反応を見れば人間性もわかるし国家財政の負担も小さい。素晴らしい提案じゃ」

「まとまりましたかな」

「うむ」


大臣はこれまでまとめた物を列挙した。

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