王が定める勇者の条件

結葉 天樹

第1話 「よくぞ来た勇者よ!」

「ああ困った。ああ困った」


王は頭を抱えていた。

魔王による世界侵略が開始されてからというものの、世界は着々と魔王の手に落ちており、人類は存亡の危機を迎えていた。


「大臣、勇者はまだ現れぬのか!」


頼みの綱は、世界に危機が訪れる時、必ず現れるという勇者の存在。

しかし、あくまで言い伝え。どんな人物がどの様にして現れるかまではわからなかった。


「はっ……まもなく到着するでしょう」


焦った王は、国中に「勇者募集」のお触れを出していたのだった。

そこへ玉座の間に血相を変えた兵士が飛び込んできた。


「王様!王様!」

「おお、勇者が遂に来たか!?」

「それが、来た事は来たのですが……」

「どうした?」

「たくさん来ました」

「たくさん?」


兵士に促され、王はバルコニーから城門の辺りを見下ろす。


「……何じゃあの数は」

「自称『勇者』の方々です」

「勇者とはあんなにいるものなのか?」


王は大臣に尋ねる。


「確かに、『勇者とは何か』とは書いておりませんでしたからなぁ……」

「大臣よ。あの全てと謁見するのか儂は?」

「仕方ないかと」

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