第2話 「おお勇者よ、現れないとは情けない」

「王様。大丈夫ですか?」


あまりの人数の多さに、謁見は何日にも渡って行われることになった。

2日目も半ばになった頃、王にも疲れが見えていた。


「何じゃあ奴らは」

「は?」

「ここまで誰一人勇者と言えん者ばかりではないか」

「そうなのですか。なかなか見どころのあるものばかりだったと思いますが」

「例えばさっきの男じゃが」

「『あらゆる武器を使いこなせる武芸百般の男』……でしたかな?」

「戦士ではないか」

「確かに」

「その前の者もじゃ」

「『熊をも素手で倒す剛腕の者』でしたか?」

「武闘家じゃろ」

「確かに」

「他にも名誉目当ての者や、そもそもよくわからんで来た者も交じっておる。戦いすらできん者もおるではないか」

「では、次の者はいかがでしょう」

「期待できるのか?」


大臣は謁見希望者の書類を読み上げる。


「『禁断の魔術を会得した魔法使い』だとか」

「『魔法使い』と名乗っているではないか」

「確かに」

「ああ……真の勇者は一体どこにいるんじゃ…」

「王様」

「何じゃ?」

「ふと思ったのですが、『真の勇者』とはいったいどのような人物なのでしょうか?」

「む……」


王は言葉に詰まる。

そもそも『勇者』とは魔王を倒す者ということ以外、よくわかっていない。


「ふむ。勇者とは何か。それがわからなければそもそも見つけ出すこともできんか」

「確かに」

「大臣。皆を集めよ。勇者とは何か定義をはっきりさせておこうではないか」

「承知しました」


こうして謁見は延期され、しばし候補者たちは街で待つこととなった。

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