衒いのないオーク観

 ざっくりオークのナニである。


 エルフだか人間を、アレしたものである。


 手先が器用であり、穴を掘るかドワーフの穴を強奪して棲み、性格はひねくれ、「人をたくさん殺す」道具の研鑽に余念がない。


 対称的に、ホビットの嗜む「パイプ草」は、原種をそのまま育ててをり、いかにしてうまいタバコにするかといふ育種の描写が除外されてゐる。


 また、最高種のウルクに「いい品種同志の掛け合せ」の臭ひがあり(雌オークは設定だけで、登場しない)、なので、「ウルクあるいはウルク・ハイ」と言はれる。ウルク・ハイは「別名をオーク人間ともいう」でいいらしいのだが、ハーフであるといふ描写があった筈(うわぁ)。善なる神の邪悪な劣化コピーを為す悪神が、イノベーションをした形跡があるのである。えー、作者の製作ノートに「ウルクとウルク・ハイが別けて書かれている」と言ふのを信じて、ウルクを「品種改良の結果」ウルク・ハイを「おそらくウルクと人間のダブルなインターブリード」とする。あうあう。D&D以来、相の子のハーフオークといふとコミュニティから蔑視されてゐるが、原典では、神様にビビりながらオーキッシュどもをこき使ふ、それなりにいい皆さんである。物語の最後、ホビット庄でパイプ草の搾取をしてゐる、人間ぽいでもウルク・ハイの人が、田舎へ帰ってきたフロド・バギンズとゆかいな野郎どもにボコられてゐるが気にしないことにする。


 その「ゴブリンのような人間」の他こっちで、「足が曲がり、手が長いウルク」がゐるのだが、多分これらもなにがしかの品種改良の(たしかさういふ描写がなかったはず)結果と言ってよささう。あと個人的に確認してゐないのだが、「番号で言われる」こともあるらしい。


 原語「オルフ」は、エルフとの関連が如実である。「オーク」といふのは後に訛った語ださうであるが、作者はオルクスがどうたらいふファンが微妙に嫌だったさうで、どっちかっつうと「ORK」と書かせたがってゐたらしい。なので「ORKISH」と言ふのを好んださうである。


 なんだか、原作者は「田舎」で蜘蛛に噛まれて生死の境を彷徨ったため、個人的に「畏き者」であったらしい。なので、子供作ってから、お子さん方へお話を語る際、蜘蛛を使ってビビらすと、一人いい感じでリアクションするお子様がゐらっしゃって、どうもお父さん調子に乗って気合の入った凶悪な蜘蛛を登場させ、ビビらせて「蜘蛛フォビアを遺伝」させたらしく、それは良いのだが、さういふわけで(『指輪物語』を読め。その昔少女漫画雑誌へ必ずついてゐた宣伝用漫画『日ペンの美子ちゃん』のキャラクターは、「『指輪』のエルフにあこがれる」と言ふ設定を持ってゐたぞ)ホビットのなれの果てスメアゴル(ゴラムと言ふのか)は、いろいろあってSHELOB(シーロブ即ち「垂れさがる雌」の意ならしい)に何となく保護されてゐるが、ではオークやトロルはといふと、サウロンだかサルマンだかいふ神を恐れてはゐるが、ガンダルヴが庄を訪ふて祝ひを垂れるやうに洞窟へ行って祝福をする描写が一切ない。


 なんとなく、オークの造型がキリスト教的な世界観の延長にすぎない、と言へさうである。さらに、キリスト教では、大罪の一つに姦淫を一応据えてゐる。それを踏ヘて、ユダヤ人の小説家ハーラン・エリスンの書いた「世界の中心で愛を叫んだ獣」といふ概念がでたはずである。なのであのー「このようなことを言っている人からは、あいまいな笑顔を浮かべて逃げることを推奨します」的な教団の教義で、「原罪は姦淫」とするものがあるが、さう言ふのは別に独創的でも糾弾すべきところでもない訳であるが(あ、ロシヤのスコプツィ派とかはおっぱいとったり睾丸取ったりするんだった)、オークの方は、ナントカ戦役で善なるものに絶滅寸前にまで殲滅させられたあとウン百年後、多くのオークが来襲してゐる点から、この辺の属性も持ってゐるやうな感じが推測できるが、くんずほぐれつのコイトゥスにかまけてゐた描写は雌含めて登場しない。

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オーク関係論(多分) 黒いやかん @kuroinohos

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