第5話

…突然の雨、それと同時に現れた目的の場所であるお城…、


だがその前には百近いヴィランが、


ヴィランの大群を切り抜け、お城の中までやってきたエクス達五人

だが城へ入ると同時、エリサの身体に異変が起こる。

突然の事態に戸惑う一行の前に、ついにカオステラー、もう一人のエリサが姿を現す。



「あれに…もどるのね…」

レイナが階段の先にいるもう一人のエリサを指差す。


「ええ…元の身体に戻る、目標の一つは達成ね…あとは…」

「あとは任せて下さい‼︎私達が必ず貴方を倒して、この物語をハッピーエンドまで持っていってあげますから!」

エリサの発言を受け継ぐ形でシェインが宣言すると同時、


「…そう?…じゃあ、頼んだわよ?」


その一言を最後にエリサの姿が完全に消えた。


そして


「あは…あははは…」


今まで一言も発することなくカオステラーこと、もう一人のエリサが


口元を三日月型に開き、空から降って来た時のエリサのような狂った笑い声を上げながら、両手に持ったハンマーを地面に引きずり、レイナ達四人へ向けて歩を進め出した。


「カオステラーに…魂が戻った…」


レイナが呟くと


「…みたいですね…」


シェインが答え、


「…本っ当に、最初っから最後までやりたい放題なお姫様だな…」


タオが呆れたような、でもなんだか振り切れたような優しい笑みを浮かべ、


「必ず、この物語をハッピーエンドにしよう‼︎」


エクスが気合いを入れて剣を構える。



そして、



ラストバトルが幕を開けた。



…敵は一人…


辺りにヴィランの姿は見当たらない、

さっきまではバンバンと外からドアを叩く音が絶え間なくしていたが、今はそれも止んでいる。


「…静かなだな…」

「不気味ね」

「うん、」

タオ、レイナ、エクスがそれぞれ周りが急に静かになったことに疑問の声を上げる。


「…‼︎…来ます‼︎」


シェインがカオステラーエリサに動きが見られ、警告を発する。


シェインに警告通り、エリサは両手に持ったハンマーを振り回しながら猛スピードで突進してくる。




__________





無事、カオステラーを倒し、この想区の調律に成功した一行、


もうここにはすることもないので、次の想区へ向かうべく、準備をしていた四人だったのだが、


最後にエリサの様子だけでも見ていこうという、エクスの気の利いた提案によりお城を訪れることになった。


「でもよ、今までは雨が降らないと見つけられなかったお城が…」

「ハッピーエンドを迎えると常に見えるようになるとは…本当に何でもありね、この想区…」

ホヘー

と、お城の壁を見上げながら間の抜けた声を出すレイナとタオ、


「それより、エリサを探そう、ね?シェイン」

エクスがウズウズと何だか落ち着かない様子のシェインに問いかける、


「そ、そうですね!パッと見てパッと帰りましょう」


あわあわと答えるシェイン、


すると、


何やら賑やかな感じの声が城の外、外壁に沿って歩いているエクス達の行く先から聞こえてくる。

その声の中には聞き覚えのある、エリサの声も混ざっている。

遠くからでもすぐに分かるような、美しい声なので聞き間違えることはまずあり得ない、


「‼︎、エリサの声‼︎」


シェインがサササーっと早足で先を行き、角から首だけ出す形で、曲がったところに居るであろうエリサの姿を見る。


そして、


「…」


固まった、


「…?どおした?」

「大丈夫?シェイン」

「そこに何かあるの?」

三人がそれぞれ疑問符を浮かべながらシェインに追いつき、同じように首だけ出して状況を確認する。


「…」

「…」

「…」

三人共、シェインと同じように固まる。

一行の視線の先には…、




一糸まとわぬ姿で、四つん這いで外を歩かされている短い黒髪が特徴的な、イケメン男性と


もう見慣れた、金色の長髪をなびかせ、ヒラヒラのついた可愛らしいドレスを身につけた、エリサの姿が、


彼女は今、おそらくは王子様と思われる、全裸の男性の背中の上に腰を下ろし、その手に持ったムチを楽しそうに振るっている。



…あぁ、そう言えばあの人、そういう人だったな…、


と四人が感動も何もかもぶち壊してくるエリサという少女の特性を思い出す。


とその時、

エリサがムチで王子様の背中を叩いた。


すると、


「ンひぃ〜ごめんなさ〜い」


聞きたくもない、王子様のあられもない悲鳴がお城に響き渡る


「ごめんで済んだら警察いらねーんだよ‼︎」


この世界に警察があるのかは分からないが、


なんだか、晴れ晴れとした顔で楽しそうに王子様を罵倒するエリサ、


「お前は私の何だ‼︎言ってみろ‼︎」

「はひぃ〜私めはエリサ様の従順な犬にございま〜す‼︎」

「犬が人語を話すか?この馬鹿野郎‼︎」

「ブヒィ〜」

「それは豚だろがー‼︎」

「あ〜っ、ありがとうございます〜」


ベシッバシッと

エリサが手に持ったムチを振るい王子様を容赦なく痛めつける。

普通なら、必死に逃げようとする所だが、どういう訳か、されるがままな王子様、

しかも、どこか幸せそうな顔にみえる。



…つまりはそうゆう人種だったのだろう…。


「…あれで良かったのかしら…?」


不安要素しかない、と難しい顔でつぶやくレイナ、


「意外と相性抜群なんじゃないか?」


それより、もうあのエリサと言う人間から早く離れたい、と適当な返事をするタオ、


「そうだね、あはは〜」


エクスはもう何も言うまいと流れに身を任せている。


「…ふふ…」


シェインも、我が同志の変わらぬ姿を見れてか、どこか嬉しそうである。


しばらくそんな地獄絵図を堪能した後、


「さっ、もう行きましょう‼︎」

シェインの掛け声を合図に、

「だな!」

「うん!」

「次の冒険へ出発ね!」

三人が答える。


言って、この想区の主役の少女に背を向けようとした四人だったが、


「…‼︎」


一瞬、


エリサがこっちにウィンクしたように見えた。


そして


「…ふふ…またね…」


…頭の中にあの、美しい声が響いた気がしたのだった…。







…今回は本当にずっとこのエリサという少女に振り回されっぱなしだったなーと思いながらも、なんだか悪い気のしない四人、


こうしてこの物語は無事、ハッピーエンドを迎え、エクス達もまた新しい想区へと出発するのだった。



…が…、


「…ところでさ…」

「?どおした?」

「いや、ここ、どうやって出るのかな〜なんて」

「…」


(〜終わり〜)

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か弱きお姫様、頑張ります‼︎ ベームズ @kanntory

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