第17話 ようやく説明役の登場かよ

ボルネアの町長から依頼を受け、キメラの製造を秘密裏に行っている盗賊団の壊滅の為、山奥にある古い遺跡跡に辿り着いたヒロ達。


月明かりに照らされる遺跡の前に立っていたのは一人の少女だった。


「勇者様、あの子…誰でしょう?」


「この辺りに人の住む集落は無いはずですが…。」


「魔物だってうようよいやがるんだ、只者じゃねえってことだぜ。」


少女は、ゆっくりとヒロたちへと近づいてくる。


「こんばんはー!」


「えっ…?あ、こ、こんばんは…?」


「あの、失礼ですが貴女は…?」


「私は『シキ』。盗賊団?って、君たちは呼んでいるのかな。その団の団長だよ!よろしくね?」


「お前が?へっ、そいつは話が早ェぜ。大人しくお縄につくならデコピンくらいで許してやる。だが、やるってんなら多少痛い目みてもらうぜ?」


「いやいやー、君たちと争うつもりは無いんだー、残念ながら。それとも?まさかほんっとーに、ボルネアの町長サンの言う事信じてたわけじゃないんでしょ?」


「ちぇっ、なんだよ、やっぱそういうことか。」


「え?どういうことですか勇者様…?」


「あのオッサンに一杯食わされたってこったろ。まーよくある話っちゃよくある話なんだけどな。たまには別の展開があってもいいんじゃね?って期待しちまって結局いつもまんまと罠にはまるんだけどよー。長いこと勇者やってっけど、なかなか無いもんだよな、つまんねー終わり方ばっかりだぜ。」


「『勇者様』、ね。じゃあやっぱり君たちで間違いないみたいね。ねえ、私と一緒に来てくれない?色々と説明…というか、話したいことがあるの!ほら、付いてきて?向こうの森に私達のキャンプがあるから!」


そう言って答えを待たずに遺跡とは別の方向に歩き出すシキ。


「え、あの、ちょっと…!」


「…ヒロさん、どうしますか?」


「ようやく色々知ってそうな奴が現れたんだ、付いていこうぜ。この手のパターンは大抵罠ごと悪党ぶっ飛ばして終わりなんだが、今回はちっとばかし事情が違うみてぇだ。楽しめると良いなぁ…へへっ…」


そう言ってシキの後について歩き出すヒロ。


「笑ってますよあの人…しかもすごい悪い顔で。実は会った時から若干思ってましたけど、本当に勇者なのかどうか怪しいです…」


「『本当の勇者』…。」


「アイーシャさん?」


「あ、すいません。とりあえず付いていきましょう。野宿は避けたいところですから…!」


「私は慣れてますけど…。アイーシャさんは基本お嬢さんですからね!」


「笑うことないでしょう…?それに、あのシキという人、何か…不思議な感じがします。あの人の話を、私も聞いてみたいのです。」


「…ですね、いきましょう!」


自然に手を繋いだ二人は、ヒロの後をついて歩き出した。


月の光で幻想的に彩られた深い森の中へと。






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