◆ 異世界なので重機で闘いましょう! エピローグ ◆

かえる

第1話 10話 鉄×魂②


        ◇


 すべての獣騎闘技が終わり、閉幕式らしきものは執り行われた。

 しかしながら『祭り』が終わりを告げたわけでもなく、元闘技場だった場所はごった返す人々で埋まっていた。


 中央のコンクリフィールドには壇上が設けられ、舞踊の舞台となっていた。

 土フィールドにはあれよという間に屋台が並び、飲食を売る店が連なった。

 伝わってくる陽気な音楽と華やいだ香りは、俺が日本で知るお祭りと変わりないものだ。


 そんなこんなで、時刻は夕方と呼ぶにはまだ些か早い時間なので、昼間っからどんちゃん騒ぎが行われている獣騎闘技会場である。

 俺はといえば、今は布を取り払いテントですらなくなった整備テントからの撤収作業に従事していた。


「会場の盛り上がりと見てると、闘技が前座でこっちが真打ちって感じがするよなあ。イベント後の打ち上げの方が盛大って、どゆことよ」


「獣騎士への感謝と供養の儀式じゃて、大いに賑うことが大切なのじゃよ」


 エリッタの爺ちゃんにはそう言われたけど、俺がもし英霊さまだったら、うるさくて心休まらないけどな。

 ま、俺はワイワイするイベント事はそこまで嫌いじゃないし、別にいいんだけどさ。


「お爺ちゃんに、タクミくん。口ではなくて手を動かすのです。早くここを片付けてしまわないと他の人の迷惑になるのですよ」


 手に山盛りの荷物を抱え、せかせかなエリッタ。

 整備士や整備機材などを乗せる、車輪がつくデッカい箱『引き箱車リアカー』へ、荷物をポンポン投げ入れグイグイ押し込めば、すぐに駆けて次の荷物を取りに行く。


「ほっほっ。早く賑わいに加わりたくて、仕方がないようじゃて」


 やれやれと、孫の元へと手伝いへ向かおうとする祖父。

 さっさと片付けを終わらして遊びたいエリッタの邪魔をしたいわけじゃなかったが、俺はその萎れた尻尾に声を掛けた。


「あのさ。エリッタ爺ちゃん。お願いがあるんだけど……まず、王都に行く前に『機械山ヤマ』へ寄れないかな」


 機械山。そう俺達が呼ぶ場所では、建設機械、自動車などの機体や車両が山のようにして積まれている。

 ほとんどが廃品同然のガラクタであるが、修理すれば息を吹き返す物で溢れていて、獣騎闘技の機体入手から始まり、エンジンやら各種部品調達には欠かせない、この異世界に於いて唯一地球の現代機械が入手できる場所だ。


「タクミくんが何やら浮かぬ顔をしていると思っておったら……はてはて。話は何かのう」

 

 曲がる腰を一度伸ばすエリッタの爺ちゃんに、俺は吐露してゆく。

 今日の決勝戦。そこで感じて見つめ直した重機乗りの自分について――。


 俺の操縦技術は、重機の乗り手の中じゃトップクラスだと自負している。

 それは今も変わらない。でも重機乗りとしては凡庸な存在と思い知らされた。

 あのアイアンペッカーのボブから、まだ経験のない本戦の”格”というものを味わわされた。

 きっと今のままの俺では、目指すてっぺんへは届かない。そう俺に危機感を抱かせる闘い、辛勝だった。


「特訓はする。けど、本戦の期日を考えたら俺の技術が飛躍的にのびるとは……悔しいけど思えない。だから、ユンボーを強化したいと思って」


 俺は願い出る。

 機械山の部品パーツがあれば、機体の大掛かりな仕様変更バージョンアップが可能になる。

 ユンボーは更なる強い力を手にできるはず。

 でもこれは、俺だけの力ではどうにもならない。

 機体のバージョンアップは、エリッタ達整備士ドカタンの協力があってこそ可能だ。

 だから、俺の頭は下がる。


「お願いします。不甲斐ない俺に、ユンボーに、エリッタの爺ちゃん達の力を貸してくださいっ」


「ほっほっ。不甲斐ないとは、何を馬鹿なことを言うておるんじゃて。それにジュウキ乗りが必要とする力をジュウキが補うのは、至極正しい在りよう。儂らドカタンはその手助けをする。そこに儂は誇りを持っておるし、この形はごくごく日常のことじゃて」


 そっと伸ばされる手が、優しく俺の肩に乗る。


「頭を上げなさい。タクミくんにこんなことをされたら、儂らが悲しくなってしまうの、ほっほっ」


「エリッタの爺ちゃん……」


 顔を起こした先にあった老人、いや老獣人の優しそうに笑う顔に、どこか癒され胸が熱くなる。


「ご老体に頭を下げている行為。何をしでかしたか私には分からないが、タクミよ。若気の至りもほどほどにしたまえよ」


 微笑む老獣人のものとは到底思えない、障る大声が後ろから混ざり込んできた。

 振り返らなくてもわかる覚えのあるそれ。

 シカトって選択肢は、エリッタからの「あ、アイアンペッカーのボブさんだ!」の歓迎により消失する。


 あらまあ、片付けに夢中だったはずなのに、ほっぽり出して。

 エリッタにマッチョ好き属性とか、必要ありませんからっ。


「毎回毎回、俺の幸せな一時を邪魔しに……、んでっ、唐突に何しに来たんだよ。ボブのおっさんは」


 振り返れば案の定、腰に手を当てる白いタンクトップのデカい図体のマッチョが佇んでいた。


「ボブさんや、もしや、共闘闘技のことかの?」


「はっはっはっ、さすがは年の功ですな。ご老体、ビンゴですな」


 俺を間に挟むのに、俺を他所にエリッタの爺ちゃんとボブマッチョが、示し合わせるかのようにウムウム頷き合う。


「エリッタの爺ちゃん?」


「急な変更だったので、タクミくんには言いそびれておったのじゃが、今年の本戦は共闘闘技になったようでな」


「共闘闘技?」


「タッグマッチのことだ。本戦は重機を二機、二人一組のチームで闘う」


 あんたには聞いてないがっ――、


「なんだって!?」


「本来なら、この地区の優勝者であるタクミと準優勝者の私がタッグを組み、本戦へ出場する予定だった。しかし私は先程引退を表明した。もちろん私の引退を惜しむ声も多く、バックヘヤ―を引かれる思いではあったが――」


「ええ!? ボブさん引退なされたのですか。そうなのですか!?」


 ぴょんと飛び跳ねて、エリッタが割って入る。


「うむ。残念だが、今後はアドバイザーとして獣騎闘技に関わることになった私だ。

タクミとの試合で後進を育てる道こそが、これからの私の道だと悟ったのだよ」


 ボブのおっさんがどんな道を進もうと知ったこっちゃないが――大会中のルールの変更とかもそうだけど、突如湧いたタッグマッチの話で、いろいろ穏やかじゃないぞ俺。


 ボブマッチョとタッグを組まなくて済むのは、素晴らしく良いことだ。

 だけどよお。


「もしかして、二人いないと俺も本戦で闘えないってこと? そうなの、いや普通に考えたらそうだよな!?」


「私に出場するつもりがないので、このままだとタクミは本戦へは出られない。そういうことになるな」


 そういうことになるな……じゃねーんだよ。



「なに勝手に引退してんだ、こら! 一緒には組みたくはねーけど、嫌がらせか、俺に負けた腹いせか、こんのにゃろ」


「落ち着きたまえ、我が弟子タクミ」


「弟子ってなんだよっ。俺にはな、俺にはなにがなんでも、本戦に出場して優勝しなきゃいけない事情があんだよっ」


 タンクトップに掴み掛かりガクガク揺さぶるが、びくともしない。


「それで、ボブさんや。ボブさんの話したいことには、あちらから歩いて来られる方が関係しておられるのかな」


 エリッタの爺ちゃんに釣られるようにして会場側へ目を配れば、人混みから真っ直ぐこっちを目指してくる人影らに気づく。 

 俺にも覚えがある三つの影。

 両端はどうでも良いお付きマッチョ。それで真ん中に、こちらは積極的に関わっても良い特攻服少女サラ。


 掴むタンクトップを離し、手を挙げたらサラが微笑み返してくれた。

 そうして、俺達が囲む輪に加われば、す、と立ち止まり、しゃん、と会釈をする。

 金髪の美しい頭がお辞儀した相手は、ボブマッチョ。


 エリッタといい、目の前のサラといい――なぜだ。なぜにこんなおっさんがモテる!?


「ボブ殿。お待たせして申し訳ありません」


「いやいや、急な申し出をしたのは私の方だ。サラ嬢が詫びることなどないではないか。はっはっはっ」


 ボブのおっさんが豪快に笑い、お付きマッチョも笑い、さすがに腰へ手は当ててはいないが、サラはクスクスと笑う。

 一体どこに面白みが隠れていたのやら、からっきしだ。


「タクミ」


 綺麗な蒼い瞳が俺を射抜く。

 じっと見つめていたところからの、不意の眼差しだった。


「私にボブ殿の代わりが務まるとは思えませんけれども、神キリシアの導きもあり再び闘技の機会を得たのです。精一杯闘わせて頂きます」


「えっと、サラが一生懸命、キリシアの為に頑張ります宣言だよな。つまり……どゆこと?」


「私が大会委員へ、サラ嬢を推薦したのだよ。後継者のタクミ以外に、私の代役が務まるのはサラ嬢くらいしかいないだろう」


「光栄です」


 たましても、マッチョなおっさんへ頭こうべを垂れるサラ。

 理解したことがある。


 一つ、おっさんは俺が思う以上に偉い人のようだ。

 一つ、女性陣がおっさんを気に掛けるは、おっさんが偉いからであって、好きとかの理由からではない。

 俺は社交辞令って言葉を知っている。


 そして、最後に一つ。

 どうやら、本戦出場に欠かせなかった”タッグを組む”が、今この場で成立した。

 しかもその相手が金髪美少女だってんだから、諸手を挙げて喜んでいいだろ。いいや、飛び跳ねていいだろっ。


「よっしゃああああ」


 唐突の俺の奇行と叫びに皆が驚いていた様子だった。

 けどまあ、周りの喧騒さに比べたら、大したことではないではないか。ひゃっほーい。





 タッグとは、すなわちペア。

 ペアで闘技を行うということは、つまり共同作業を行うということ。

 まさか、俺にはまだまだ遠い話だと思っていた結婚を前にして、男女の初めての共同作業を迎えようとは。


 本戦までは、10日ある。

 まずはきっと、「お互いのすれ違いが起こる」。

 だから、「このままではいけない。二人の心を一つにしなくては」的展開に必ずなる。

 あとは「一緒に生活してお互いの気持ちを深め合う」時間が待つばかり。


 朝起きると寝床を間違えたサラが、俺の隣でスヤスヤ寝息を立てている。

 うん、高確率であるな、これ。

 それにお約束てっぱんの、お風呂やトイレで鉢合わせもまず間違いないだろう。

 特攻服サラのキャラ性を活かしたイベントなら、胸元のサラシを俺が巻いてやる――なんてこともあるのか!? いいや、ありそうな気がする。


 それに、まだまだこっちならでのもあるよな。

 重機の操縦を教えるのに、こう、後ろから手を回して体を支えてやりながら、操縦レバーを一緒に握ったりして、ふっと気が抜けた瞬間見つめ合う二人。

 その後は、目と目で通じ合うだけでは物足りず、唇と唇を重ねて、いやんな夜。


 もしくはもっと過激に、重機に燃え上がる俺達はお互い情熱的になって――、


『サラ、俺の下部機体のレバーをいくら動かしても重機は動かないぜ』


 からの、


『私はタクミを操縦したいの』


 なパターン。

 ぬーん、待て待て。「教官、ご指導お願いします」パターンも捨てがたいな。

 操縦室の狭い空間ってのが、また乙だよな。

 あれだなあ、ユンボーの操縦室を掃除しとかないといけないな……、


「――タクミくん。タクミくん」


 なんだ? エリッタが俺を呼んでる?


「ん、何?」


「やっと反応してくれたのです。エリッタは、ずううううーと呼んでいたのですよ。でもタクミくん、グヘグヘ言うばかりで応えてくれないのです」


 頬を膨らますエリッタも可愛いぞ、と習慣的感想を抱いてすぐ、はっとなる。

 ここは俺とサラがあんなこんなで、くんずほぐれつしていた重機の中ではなかった。

 深い妄想から呼び戻された俺は、視界に映るものを現実として受け入れた。


 隣のエリッタに、ほんの近くではエリッタの爺ちゃんにサラ。あとボブのおっさん(背後に黒マッチョ付き)が何やら話し合っている。

 どんちゃん騒ぎの闘技会場からの喧騒は相変わらずで、整備テントの片付け途中の状態も一緒。


「我ながら、時と場所を選ばない妄想世界の住人ディリュージョンダイブの潜在能力に驚きだな……」


「タクミくん、よだれが汚いのです」


 そのような指摘がありましたので、服の袖で自然なゴシゴシ。

 次に「ちゃんとお話聞いていましたか?」と問われたので、まったく鼓膜を震わせていなかった俺ではあるけれども、聞いていたさの顔を作る。

 人として、エリッタのような純粋な少女に嘘は吐けないからな。だから、口は開かない。


 んで以って、これ以上カッコ悪いタクミくんも見せられないわけで。


「――では、サラ嬢よろしく頼む」


「はい。必ず栄誉を持ち帰ることを誓います」


 顔を向けた先では、がしりと力強い握手を交わすボブのおっさんとサラ。

 中年マッチョと特攻服美少女の契ちぎりの光景に、好奇の眼差しを向けた俺であったが、これは好機でもある。

 良いタイミング。

 察するに、皆は本戦へ向けての今後の事を話し合っていて、それが終わった直後のようだ。

 ボブのおっさんに習い、ここで何食わぬ顔をして握手を求めれば、俺は話に参加していたことを装える。

 そうなれば、エリッタの顔が物語る「ほんとに聞いていたのだろうか?」の疑念を払拭できるうえ、場の流れも締まる。

 つまりは、ウインウインだ。


 俺はサラの方へ踏み出し、右腕を前へ。


「サラ。俺とのタッグマッチ、本戦よろ――――」


 台詞すべてを述べることができなかった俺の、思うがままの言葉を叫ぶなら、柔らかい。

 現在、俺の視界は、居心地の良い闇に覆われている。

 だから、客観的視野を開眼させる。


 俺の差し出す手に応えようとしたサラへ、つまずく俺は倒れ込んだ。

 はむ、と顔面が彼女の弾力のある胸へ突っ込んだ。


 説明、いや弁明させてくれ。


 一つ。俺の前倒れコケは、仕組まれたものだった。

 片付け途中のここなのだ。道具とか部品とか椅子にできる鉄の箱とか俺の足元に転がってても不思議ではないだろ。


 一つ。誓って言う。俺の右手は握手を求めていた。

 サラシを掴み取るつもりなんて毛頭なかった。


 一つ。これはイメージだが、胸元のサラシブラがズリ落ちれば、ぷるんっと覆っていたものが飛び出したと思う。

 つまり俺の顔はいわゆるじか――言い換えればナマで触れていることになる。

 しかし、だがしかしっ。

 見てはいない。近距離過ぎて見られない。


「もがもが。サラ、これは事故――」


「きゃあああああっ」


 サラの悲鳴とともに、俺は吹っ飛んだ。

 頬から吹っ飛んだ。

 ビンタと呼ぶ、張り手という名の掌底打撃を食らい地面へ叩き伏せられた。


「ぬごおお、痛烈だべええ。俺生きてるよな!? 痛いから生きてるよな!?」


「すまない。と、取り乱してすまない。事故だというのは理解している。事故でなければ、ブレッドで裁きの鉄槌を下している。でもタクミ。今の私は、私が平静などでいられようものかっ」


 前全開だった上着を正し、胸元を腕で覆うサラ。

 強く発せられた語尾を最後に長い金髪がぶわりと翻れば、俺が涙目で見上げるそこからサラの背中が遠のいてゆく。

 人目を避けたいはずなのに、闘技会場の人混みに紛れた様子から、俺よりもかなりの動揺があったのだろうと見て取れた。


「我が門弟、タクミよ。タッグマッチはパートナーとの呼吸がインポータンスだ。

サラ嬢との信頼関係を損なうのはあまり感心できないな」


「門弟とか言うなら、先に俺のフォローしろよっ。おっさんも見てただろ。

わざとじゃねーんだよ、事故なんだよ、事故。ある意味俺、被害者」


 お近づきになりたい女子から思いっきり、ひっぱたかれたんだぞ。

 精神的なもの込みで大ダメージだし、ショックで胸がギュウなんだよ、ギュウっ。


「タクミくんは何をそこで転んだまま、ぼうっとしているのでしょうか。早くサラさんを追い掛けるべきなのですよ」


「いや、エリッタ……あれだよ。こういう場合は、かえって追ってはダメな気がするタクミくんだよ。言ってもわかってもらえないだろうけれど、ギャルゲーとかだとこういう、いかにも追いかけなさい的フラグの先には、ロクな結果が待ってないもんなんだって」


「いいえ、絶対追っ掛けるべきなのです」


 あっさり、断言されてしまう。


「ほっほっ。タクミくんの気遣いもわからなくないが、エリッタの言い分も正しいものじゃて。人と人の関係は時間が修復してくれるものじゃが、それは歳をとってからでいい。若い人にはそれに頼らなくてもよい、切り開けるエネルギーがあるじゃろうて」


「エリッタの爺ちゃんが言ってることはなんとなくわかるよ。当たって砕けろが信条の俺だし、待つより行動だけどさ……ほら、爺ちゃんも言ったように、やっぱりサラの気持ちを考えると……それに俺の気持ちも」


「エリッタは少しガッカリなのです。タクミくんのジュウキ闘技への覚悟はそんなものだったのでしょうか」


 ウダウダやっていた俺に業を煮やしたのか、食い入るようにしてエリッタが言う。

 やや強い口調のその口は、獣騎闘技の覚悟の言葉を持ち出してきていた。


「理由は聞けないままだったけれど、エリッタはタクミくんのジュウキに懸ける想いに、心底惚れ込んでいるのです。何ものをも顧みない、タクミくんの真っ直ぐな情熱に心打たれたのです。タクミくんの魂は、本物の獣騎士さんと遜色のない強いものだと、エリッタは信じて疑わないのです」


 気持ちが込もるエリッタの激励……腰の重たい俺の尻を叩くそれに、俺の魂が揺すぶられる。


「そうだったな、エリッタ……」


 俺は誓ったんだった。


 俺が待望する――『どきパラ』をプレイするには、何がなんでも日本へ帰るしかない。

 そのためには、重機で闘う獣騎闘技大会の覇者となり、『異世界旅行券』を手にするしかない。

 タッグマッチとなる闘技大会には、相棒のサラが絶対に必要だ。


「わかったよ。俺はサラを追いかける。俺が目指す……いいや、俺とエリッタたち、そしてユンボ―とで目指すそこに、サラ=ブレッドもいてもらわなくちゃ困るからな」


 よっと、起き上がれば、ぐ、と親指を立てた拳を見せつけた。

 そうして俺は、迷わず頂上へ駆けるはずだった足を、とりあえず、少女を追いかける足に使うことにするのだった。


「サラどこに隠れようとも、俺はすぐに見つけてやんだからなっ。待ってろよ、どきパラ! 俺は絶対に諦めないっ」


 異世界の空を染める夕焼け。

 俺の中でたぎる熱い魂の色は、それよりも赤く燃え上がるのであった。



           了

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