エピローグ.あらゆる記録に残らない透子さんが僕といた証明

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「ねえお母さん、アルバムにひいおばあちゃんの写真が一枚も見つからないんだけど」


「ああ、ひいおばあちゃんの写真は一枚も無いのよ」


「なんで? ひいおじいちゃんの写真はちゃんと残ってるのに。一枚も無いなんて、変じゃない?」


「えっとね……ひいおばあちゃん、特異体質でね、写真とかビデオとかに、写らなかったみたいなの。だから、ひいおばあちゃんの写真はないのよ。ほら、ひいおじいちゃんと一緒に描かれてる似顔絵なら入ってたでしょ?」


「あの絵がひいおばあちゃんなんだ。でも、写真に写らないなんて……そんなことありえるの?」


「今でも原因はわからないけど、実際そうだったみたいよ」


「うーん、ほんとに存在してたの? ひいおばあちゃん」


「なに言ってんの、当たり前でしょ、そうじゃなきゃ、


「……そっか。そうだよね」


「そうよ。だからひいおじいちゃんは、ひいおばあちゃんとのことを、日記につけて残してたんだって。ずっと後になっても、ひいおばあちゃんがそこに居たことを、あとの人達に証明するために」


「へぇー、なんだかロマンチックだね」


「ええ。二人とも、いつも幸せそうだったわ」


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「ねえ、とうこさん」


 僕は、腕の中のとうこさんを見つめて、話しかける。


「はい」


 とうこさんが透き通った高い声で返事をしてくれる。


「僕になにができるか、考えて……日記をつけようと思うんだ。とうこさんと一緒に過ごした日々の記録。……それを」僕は意を決して言う。「その記録を、ずっと先まで伝えるんだ。……子ども、孫、ひ孫……もっともっと。命が続いてく限り。それが、とうこさんが僕といた証明にならないかな、って」

「それって……!」


 とうこさんは目を丸くして僕を見つめ返した。

 どんなに心の準備をしても、口に出すのはたまらなく恥ずかしい。

 僕は、思わずとうこさんから目を逸らした。

 でも、口元が緩んでいたのは、隠せない。


「大学出て、とうこさんを迎えに行けるようになったら、そのときもう一回、同じこと、言うから」


 僕がそういうと、かわいくて美人なとうこさんは、これまででいちばんの、満面の笑顔で頷いた。


「はい! 待ってますね!」




あらゆる記録に残らない透子さんが僕といた証明

   →証明終了。そして遥かな未来まで、いつまでも証明継続中。

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