エピローグ Q.お兄ちゃんは病気ですか? A.イエスッ! 治療は手遅れですっ♪


「自作自演で、ラブな展開を演出するの!」


 わたしがそう力説するのは、やっぱりぱりぱりいつもの喫茶店。

 注文したのは、もちろんメロンクリームソーダ。


 グラスに満ちた液体は、水に溶かしたエメラルド。

 窓から差し込む暖かな光に照らされ、どこまでも透き通ったグリーンを魅せていたり。

 そして、カランと音を立てる四角い氷。

 深緑の泉に浮かんだ乳白色の浮島は、バニラアイスのアイランド。


「自作自演ですか?」

「そう、自作自演。ゆかりさんは、KGBスパイが異性の協力者を口説くときの手口を知ってる? ドラマみたいな運命の出会いを演出して、偶然を装った再会なんかも裏で仕組んで、これはもう恋するっきゃないでしょな状況に追い込んで、恋でメロメロなんでも言うこと聞く協力者にするの」


 今日もゆかりさんと作戦会議、たぶん明日も作戦会議。

 お兄ちゃんの病気が治るまで、ふたりの恋愛ミッションは終わらないし。

 ――じゅちゅ。

 メロンクリームソーダの魅力は、きっと人類滅亡まで尽きることはない!


「えりすちゃん、この作戦で行きましょう!」

「ええ、今度こそお兄ちゃんを陥落させましょっ!」


 作戦内容が煮詰まると、わたしとゆかりさんはハイタッチ。

 病気のお兄ちゃんをどうにかすべく、互いに手を取り合って今日も明日も恋愛ミッション、明日も明後日も恋する活動、魔法に手を出し、サキュバスを監禁して、サンタを拉致してトナカイと戦う。


 なんでもアリだし、

 ルールはないし、

 恋する乙女は治外法権、


 オッケー!

 ――これは!

 ――――事故だから(白目)


 わたしとゆかりさんの「お兄ちゃん更生計画(仮)」は。

 きっと、まだまだ終わらない。

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★★★ Q.お兄ちゃんは病気ですか? A.イエスッ! 治療は手遅れですっ♪ ★★★ 相上おかき @aiueokaki

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