「メリーさん」から電話がかかってくる怪談チックな雰囲気で物語は始まります。じわじわと迫るメリーさんに電話の向こうで主人公は恐怖し──とはならず、なんと退魔の刀を携えた主人公と伝奇バトルアクションが開始される──のかと思いきや、そこからまさかの主人公がトラック転生。RPG風の世界に召喚され、冒険の旅が幕を開ける──のかと思いきやそうはならない。冒頭からこう来たら次はこう来るだろうという予想がことごとく覆されていくのです。
ここまででも引きとしては十分なのですが、以降も、とにかく詰め込まれたネタの量がすごい。物語を主導する主人公というのがまたツッコミどころ満載の人物で、異世界に召喚されるや否や力ないものを虐殺し蹂躙。俺は何ものの指図も受けないと言わんばかりに異世界もののテンプレ展開をぶち壊しながら、かの地で無双していくというのが本編の主要ストーリーになっていきます。Web小説のジャンル的にはなろう系異世界ものの逆張り、いわゆるアンチ異世界ものに属するでしょうか。徹底したメタ視点によって生み出される世界観はある種独特です。
えげつない下ネタだけでなくスレスレのネタを幾多も仕込み、有無を言わせぬ疾走感で駆け抜けてくさまは爽快。ホラーがメインなのかギャグがメインなのかと問われれば、かなりギャグに振り切っているのですが、そんなことはどうでもよくなってくる勢いと読みやすい文章で引き込まれます。何よりタイトルがズルい。名は体を表すとも申しますが、このタイトルだけでも完勝といった感があります。
「メリーさん」や「トイレの花子さん」などの登場する都市伝説存在たちがストレートな妖怪、幽霊というよりも、それぞれの都市伝説に由来する異能を有する能力者という設定も捻りがあってわくわくします。
おススメです!