目覚めた吸血鬼はお殿様⁉

吸血鬼。それは世界一有名と言っても良いモンスター。
ニンニクや十字架、太陽などと言った弱点も多いけど、人間の血を吸い人間以上の力で暴れまわるその姿はまさに怪物!

だけどこのお話に出てくる吸血鬼は、そんな一般的な吸血鬼とは若干のずれがあります。なんせ彼は、数百年前の日本にいたお殿様みたいなお人なのです。
主人公であるさつきの家は、代々この吸血鬼、通称『若様』に使える由緒正しきお家。当然そこの娘であるさつきも、若君に使える身です。
数百年ぶりに若君が目覚めたかと思うと、その容姿は女の子ならつい見とれてしまうくらいのイケメン。
しかし江戸時代の感覚で物を捉えてしまうので、電化製品を見ると驚き、洋服を着れば奇妙な格好と言い怪訝な顔をする。「そういうものなんです」と言い聞かせるさつきは気苦労が絶えません。

だけど何より大変なのは、やはり若君が吸血鬼である事。皐月は自分の血を、たびたび若君に吸わせます。
死なないくらいの、少量の血。だけど吸われたら貧血を起こすので、本当はあまり吸わせたくはないのです。ですがそれでも、何だか若君の事は放ってはおけない。

最初はこんな感じのほのぼのとしたお話が続きます。しかし物語中盤、さつきや若君の住む町である大事件が起きて、今まであった日常が呆気なく崩れていくのだから驚きです。
詳しく書くとネタバレになってしまうので多くは書けませんが、この日常の崩れ具合が実に良いんです。今まで当たり前のように日々を過ごしていたのに、それが壊れてしまってもがくさつきやその仲間たちの姿ときたら……読んでいてドキドキが止まりませんでした。

吸血鬼ものが好きだと言う方。現代を舞台としたバトルが見たいと言う方、ちょっとズレたイケメンが好きだと言う方は、ぜひ本作をお読みください。きっと素敵な出会いが待っている事でしょう。

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