君に贈る言葉のあたたかさ。

ぼんじん

第1話

からす なぜなくの からすのかってでしょ


この歌がなったら帰らなくては行けない

誰が決めたのでもなく親や先生に昔から言われ続けた言葉

皆は、その歌が鳴って以降外に出ると連れ去られてしまうと信じて疑わなかった

それが外で元気に遊ぶ子供たちの暗黙のルールになっていた


じゃあね


またね


そんな声が飛び交う中1人の少女は立ち尽くしていた


髪も整えられていないショートカット

普通のカッターシャツにカーキ色のズボン

そして紐のついたブーツ



誰がどう見ても貧乏とわかるような身なりであった


彼女はベンチに置いてあった長めのクッション小脇に抱えなにやら立ち去っていった


暫く歩いていると小さい道の駅が見えた

その小さい道の駅のバスターミナルがあった

そこにはものすごくながいベンチがあった

このベンチに彼女はクッションを置きなにやら寝る体制へと入った


まさかとは思うが察しがつくだろう


そう、彼女は家がないのだ





捨てられていないと言われれば嘘になるが彼女は先日今までいた施設を抜け出してきたところだった


抜け出してきた動機は不明だが不満をもっている様子はない


でも当然抜け出してきたのだから食べるものもなく寝泊まりするところもない





彼女は寝付けるようにいつもクッションを抱き抱えて寝ていた

だから持ってきたようだ


しばらく目を瞑っていると誰かの気配が背後からした



警察であったら保護されるであろうが、今のご時世そんなに上手くはいかない


悪い大人だったら連れ去られてしまう


あの歌がなって以降に外に出てしまうと連れ去られてしまうというのはあながち間違ってはいないようだ



彼女は一つ冷や汗を流し今も尚寝たふりを続けた


すると背後の人影は彼女の頭部の隣に座った



「こんなとこで餓鬼がなにしてんだ」


声がとても低く重みのある声だったから彼女は吃驚した


そして、重い頭をあげて隣に座った彼を見た


彼女の目には


オールバックにされた髪に程よく焼けた肌、目つきが鋭く睨まれてるかのような顔がうつった


(目つきが鋭くなかったらイケメンというやつだったのかな)



彼女はどうでもいいことを考えていたようだ


そして質問に応えるべく口を開けた


「私、家がないんだ」


純粋な目で言う子どもを前に彼は同情の目を向けた


「そうか、そりゃ大変だ」


彼はつぶやき煙草を一本咥えて煙を吹かした


そして何事もなかったかのように彼は立ち去っていった











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