【4日目】

 ついに、来てしまった。この日が、

 僕のシンボルが……、



 無 く な り ま し た 。



「う、うわーん! マリーナぁ!」

「わー、本当にキレイにすっきりさっぱりだな」


 マリーナは興味深そうに僕の下半身は見つめていた。そんなに見つめられると恥ずかしくて、モジモジし始める僕。


「一つ疑問が残るな……、消えたモノって何処に行ったんだろうな?」

「変なこと、考えなくていいよ!」


 僕はマリーナの頭にチョップでツッコミを入れた。



 昼、僕が自室でマリーナの書斎から拝借した本を読んでいた時だった。

 いきなりマリーナが飛び込んできたのだ、かなり焦った様子で。


「ユウ。今すぐ隠れろ」


 彼女の表情には余裕が無い。


「どうしたの? マリーナ」

「いいから隠れろ。私に何があっても出てくるな」


 そう言って、彼女は僕を部屋のクローゼットへと押し込んだ。


「ソレって、一体どういうこと?」

「シッ。来る」


 彼女はカトルへと変わり、僕の部屋から出て行った。

 真っ黒のクローゼットの中で僕は体育座りで座り込み、耳を澄ます。

 ガチャ。

 扉が開く音が聞こえた


『よぅ、ミケイスじゃないか。こんな森の奥地に何か御用かな』

『カトル・リーストン、貴様の化けの皮がまさか魔女だったとはな』


 ミケイスにカトルが魔女だとバレていたのだ。一体どうして?


『ほう? その根拠は?』

『昨日、区長室から出た貴様をつけさせて貰った。まさか、女に化けるとは思わなかったが。例の呪いの女とは十分と仲良さそうじゃないか。仲間を救う為に、強制婚姻だなんてでっち上げをするなんて、汚いな』


 ミケイスはあの時の一部始終を見ていたのだ。


『フッ。ストーキングするお前の方が性質悪いな』

『区長には既に貴様の正体を知らせてある。偉くお怒りだったよ。明日には貴様の処刑を行う。皆を騙したという大罪の炎をとくと味わうが良い。連れて行け』

『ぐっ……』


 このままではマリーナが連れて行かれる。助けなきゃ。でも、恐怖心で体が動けないのだ。お願いだから、いう事を聞いてくれ。


『そうだ、ついでに例の呪いの女も連行しろ』

『奴なら、お前らが来る前に逃がした。残念だったな。今頃、遠くの方まで行っているだろうよ』

『フン。まぁいい。お前を連行することが目的だからな。連れて行け』



 バタンと音がして、やっと僕は体の自由に動かせるようになった。部屋を出ると、マリーナの姿は無い。連れて行かれちゃった……。


「マリーナを助けに行かなきゃ」


 そうだ、僕はまだ元に戻っていない。これはもしかすると、マリーナから課せられた試練なのかもしれない。試練に、マリーナ自身が危険に晒されているのは、どうかと思うけど。

 でも、マリーナが何処に連れて行かれたのか分からない。例え施設だとしても、あそこは警備が厳しいから、助けに行こうとしても捕まってしまうだろう。それじゃ、ダメだ。


「最悪、明日の処刑時に殴りこむか」


 処刑は、大勢の民衆の目の前で行われる。人が多いので、胸さえ隠しておけば恐らくバレないだろう。

 確か、クローゼットにサラシに使えそうな布もあった。これを胸に巻けば、胸もつぶれるだろう。服は、僕が着ていた服を使えばいい。


「マリーナ。きっと助けに行くからな」


 僕はそう決意を固めた。



***



 魔女収容施設。その地下にある懲罰牢へと、男装が解けた私は放り込まれた。

 さっきまで、区長に痛めつけられた傷がズギズギと疼く。

 はぁ、ミスったなぁ……。まさか、ミケイスがつけていて、女の姿を見られていただなんて、アイツも結構執念深いところがあるからな。と一人納得していた。


「さて、ユウはどうやって助けにくるかな?」


 明日があの病気を治す最終期限。私自身を危険に晒してこんなことをするだなんて、彼はきっと呆れてしまうかもしれないけれど。


「これだけ私だって命を張ったんだ。カッコよく助けてくれなきゃ、男が廃るぞ」


 そう呟いて、私はクスッと一人笑った。

 でも、本当はとっくに気づいていたんだ。

 私はもう……。

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