【3日目】

 マリーナのお陰で怖い夢は見なくなったのは良い事なんだけど……、


「いったーーーーーーーい!!」


 太ももの付け根に激痛が走って起き上がることも困難な僕。


「今度は、骨盤の変形か、安産体型だな!」


 朝からカトル化しているマリーナはそう笑ってきます。


「笑い事じゃな、ったーーーい!」


 マリーナを怒ろうにも、起き上がるたびに激痛が走るので怒るにも怒れないのだ。


「今日一日はベッドで大人しくすることだな。一応、痛みを和らげる薬を作ったから置いておくぞ」


 そう言ってマリーナが置いたのは、キレイなクリアブルーの液体。前回の女体化の進行を抑える薬に比べたら何万倍もマシだ。

 僕はソレを痛みが走る体を何とか起こして、飲む。ちょっとスーッとする感じの味がした。


「効くのには時間がかかるから大人しくしとけよ? 俺は出かけてくる」


 そうマリーナはヒラヒラと手を振って、僕の部屋を出て行った。

 彼女も彼女なりに忙しいのだなぁ、とベッドに再び潜る僕。すると、布団の暖かさからか、ついウトウトとしてしまい、眠ってしまった。



 ガチャ。

 次に僕が目を覚ましたのは、扉が開いた音だった。

 僕が寝て六時間ほど経っていた。マリーナが帰って来たのだろう。そう思って起き上がると、今朝のような足の付け根の痛みはすっかり引いていた。さすがマリーナ特製の薬、効果はバッチリだ。

 さて、痛みを引いたし、出迎えようかなぁとベッドから出た瞬間、

 バタン。

 何やらリビングの方で大きい音がした。マリーナに何かあったのかもしれない、僕は急いで部屋を出ると、

 そこには男装を解いたマリーナが倒れていた。


「マリーナ!」


 僕は彼女に駆け寄って、彼女を抱き寄せる。体が熱い。


「マリーナ、君、熱があるじゃないか」

「……ん。あぁ、ユウか。もう、痛みは引いたか?」


 彼女はいつもと違い、弱々しく笑う。


「痛みのことよりも、マリーナの体調だよ。凄い熱じゃないか」

「いつものことだから、大丈夫だよ」

「大丈夫じゃない! ベッドに運ぶよ」


 僕はマリーナを担いで、彼女の部屋へと向かう。しかし、段々と力が弱まっている僕は中々マリーナを運ぶのに一苦労だ。


「私は重いし、運ぶのは大変だろ? 気にしなくていいから、おろせ」

「いやだ、運ぶ」


 何とかマリーナを部屋へと運んで、服を脱がす。すると、

 体中にロープの跡や、火傷のミミズ腫れの跡が無数に刻まれていた。


「マリーナ、コレ……」

「見られちゃったか、区長に虐められた跡だよ。大丈夫、薬を作って飲めば跡形の残らない」


 あの区長め、そういう趣味までもあったのか、そう思うとなんだか怒りが沸々とこみ上げてくる。


「こんなことをし続けていたら、マリーナが死んじゃうよ」

「でも、しなきゃいけないんだ。自分の身を守るためにも。分かって欲しい」


 そう言って彼女は、僕の頭を撫でた。


「でも、区長もビックリするだろうなぁ、自分の玩具が実は女でしたー、だなんて。腰を抜かすぞきっと」


 暗い話題をしないように、マリーナが面白可笑しく区長をイジる。彼女なりの優しさが胸を刺した。


「マリーナ……」


 言うなら、今しかない。そんな気がした。


「ん? 何だ?」

「……好きだよ」


 一刻も早く、男に戻ってマリーナを守ってあげたい。そんな気がした。


「んー、ムードが足りないなぁ……三十点」


 彼女はあろうことか、僕の告白に点数を付けてきたのだ。


「そ、そんなぁ……、結構頑張ったのに」

「ハハハ、残念でした。あと二日に期待だねぇー」


 マリーナはそう笑った。これも、場を和ませようとする彼女なりの気配りなのだろうか。僕も和やかなそんな雰囲気に流されていた。



 その僕らの様子を外から伺っている奴が居ただなんて、その時は考えもしなかったのだ。

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