マジョ×KISS=ミラクル

黒幕横丁

『王様と魔女』

 むかし むかし あるところに 二人の 仲の良い 夫婦がおりました。

 そんな 仲の良い夫婦の家へ ある日 一人の旅人が 訪ねてきました。

 旅人は 酷く弱っていて 夫婦に こう 頼みました。

「ここ三日 何も口にしておりません リンゴ一個でも 構いません 恵んで頂けませんでしょうか?」

 今にも行き倒れそうな その旅人を 夫婦はあたたかく家へ招きいれ 腕によりをかけて 食事をもてなしてあげたのです。

 すると 旅人は 先ほどまでのみすぼらしい姿から 光り輝くほどの聖者へと 変わったのでした。

 その聖者は 夫婦に こう告げました。

「貴方たちには 大変感謝しております お礼として 貴方たちの願いを一つだけ 叶えてあげましょう」

 その言葉に 夫婦は 互いに目を合わせます。

「私は 富と名誉が欲しいです」

 夫婦の旦那さんは 聖者に そうお願いを伝えます。

「では 私は この人を支えられるような力が欲しいです」

 奥さんは そう 聖者に 願いました。

「いいでしょう その願い 叶えて進ぜよう」

 聖者は そう言って姿を消しました。


 次の日 男は 一国の王になりました。

 女は 男を支える 魔女になりました。

 男は 権力と富で 国を豊かにしていきます。

 女は 与えられた魔力で 国を動かしていきます。

 仲の良い夫婦は 仲むつまじく 一国を築いていく。


 ハズでした。


 国がどんどん発展していった ある日、

 王は 途端に恐ろしくなったのです。

 膨大な魔力で 国を動かしていく 妻の姿が。

 いつか この国を 乗っ取ってしまうのではないかと 王は考えてしまったのです。

 王は そのことばかり考えてしまい 国を動かす歯車は 少しずつ 狂いはじめていました。

 なんと 王は 妻が その諸悪の根源だと 処刑してしまいました。

 魔女が居なくなり 国は なんとか発展しつづけました。

 しかし 国で生まれる 女児が 皆 魔女のような 力を 備えるようになりました。

 それを知った王は この国で生まれた 女を 皆 魔女として 隔離するようになりました。

 魔女を隔離することを この国では 魔女狩りと呼びましたとさ。


 めでたし、めでたし。


(『王国誕生のものがたり』から抜粋)

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