13歳の公爵、世界統一目指してます!
AZUNA☆
Chapter 1: 誕生日
その日は姉の誕生日だった。朝一番に、4歳年上の姉の18歳の誕生日にあげるプレゼントを買いに街へ出かけた。この年は姉にとってとても大事な年なのだ。この夏に、姉の人生が決まる。そう、姉はカナダにバレエ留学しようとしているのだ。この夏のサマースクールに参加し、認められれば9月から姉はカナダに行ってしまう。一緒に過ごせる最後の誕生日になってしまう可能性が高いため、今年は気合を入れて誕生日プレゼントを選ぶことにしたのだ。
私は
「どれにしようかなー。高いなー。でも圭のためだから!」
いつも行くようなかわいくて安い、学生向けの店ではなく、もっとちゃんとした、高級なアクセサリーを売っているお店の中を歩き回りながら私は一人呟いた。これから何が起きるかも知らずに。ふと、あるネックレスが目に留まった。ターコイズブルーのペンダントだ。電気の光を反射して輝いて見える。値段を見ようと足を進めた途端。
「お客様、何かお求めでしょうか?」
私をじっと見つめていた店員が駆け寄ってくる。きっとまだ子供の私が商品を買いに来たのではなく、遊びに来ただけだと思ったのだろう。憤慨した私は、ニコリと笑いながらも鋭く店員を見つめた。
「そうなんです。姉への誕生日プレゼントなんですが…。一万円相当のものってありますか?」
まさか買うとは想定していなかったのだろう。慌てて店員は態度を変えた。
「申し訳ございません。どのようなお品をお探しでしょうか?」
「ネックレスとピアスを探してるんです。ネックレスの方は、小さな宝石がついた感じので、同じ宝石のピアスがいいんですけど、ありますか?」
「ございます。お姉さまはおいくつになられるのですか?」
「18です。若々しいのがいいんですが。あはは」
「それでしたら誕生石のアクセサリーなんかどうでしょうか?」
店員がニコニコしながら誕生石コーナーに案内する。
「お姉さまの誕生日は?」
「姉の誕生石はルビーです。ただ、赤があまり好きではないので。どちらかというと、青とか水色とか紫なんかが好みなんです」
私は苦笑いしながら答えた。
「そうでしたか。ではこちらなんかどうでしょうか?ブルーサファイアのプチネックレスです。これのおそろいのピアスもございます」
私は定員が指差したネックレスをじっと見つめた。
(きれい…。)
ついついため息が出てしまうほど、その宝石は美しかった。引き込まれそうなほど真っ青なサファイアなのだが、なぜか水色が入っているような気になってしまうのだ。そして何よりも、自分を呼んでいる気がした。
「このサファイアは獅子座の守護神アポロンと7月の守護神、大天使ミカエルが流した涙が混ざった宝石だといわれているのです。だから青の中に水色が入っているような気がしてしまうのです。お姉さまにぴったりではないですか?」
私はネックレスから目が離せない。まるで海底の宮殿が浮かび上がってきそうな青。そこに日が差し込んでいるように見える。もうほかの宝石を見るつもりはなかった。値段も関係なかった。
「これにします。ピアスとセットで」
「かしこまりました。合わせて、2万5000円です。ラッピングいたしますので、少々お待ちくださいませ」
さすがに値段を聞いて鳥肌が立つ。
(2万5000円…。高すぎっ。3万円持ってきててよかったぁ。)
ため息をつきながら私は現金を取り出し、カウンターに置いた。すると、ラッピングをほかの店員に任せ、先ほどの店員がレジで会計を始めた。
「お買い上げありがとうございます。当店では只今、2万円以上お買い上げになったお客様のみ、1万円以下のお好きな商品をプレゼントするお得なキャンペーンを実施しております。ご希望の品はありますか?」
あまりのキャンペーンに、私はポカンと口を開ける。
(一万円?そんなの無料でもらっていいの?怪しいお店とかじゃないよね…。)
周りを見ると、客はたくさんいる。繁盛しているようだ。ではやはり、無料でプレゼントするということなのだ。
「お客様?ご希望の品はありますか?」
黙りこくった私に店員がもう一度問いかける。
「あっ!それじゃあ…」
値段はわからなかったがさっき見つけた、ターコイズブルーのペンダントが気になった。その前まで歩いていくと、1万1000円のタグが目に入った。
「はぁー。ダメかぁ」
あからさまにがっかりしてしまったのだろう、店員が慌てて駆け寄ってきた。
「こちらでございますか?そうですねー、お姉さまの誕生日を記念して、1000円おまけいたしましょう。すぐに装着なさいますか?」
店員が笑って言った。それを聞いた私はパッと顔をあげた。
「いいんですか?ありがとうございます!」
私は満面の笑みで店員にペコペコお辞儀をした。すると、ちょうどラッピングが終わり、もう1人の店員が出てきた。
「お待たせいたしました。こちらでございます」
私は袋を受け取り、もはや神様にもなった店員からペンダントを受け取った。すぐにつけてみる。すると宝石が暖かくなったような気がした。気のせいか、光も強まった気がする。するとその店員がこういった。
「そのペンダントは射手座の守護神、ゼウスが一番愛する妻に送った宝石のかけらだといわれているのです。ターコイズなのですが、射手座の守護神からの贈り物として射手座の守護石、トパーズが中に埋め込まれているんです。だからそんなに光るんですね。トパーズは指導者の高貴な石、ぜひ上手に使ってください」
「射手座…。実は私、射手座なんです」
わたしが宝石をじっと見つめていうと、店員はにっこりと笑った。
「では、あなたを守ってくれることでしょう。お買い上げ、ありがとうございました」
私は上機嫌で店を出た。通りに人があまりいないことにはちっとも気づかずに。
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